ひとつの夜に 篠原 有

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 切れたソコに蒲田はティッシュを宛てがうと、スッキリしたらしく裸のままでソファーに座る。  下肢だけ丸出しにされた僕はすぐにでも下着を身につけたかったけどあまりの痛みに体を動かすことが出来なかった。 「なぁ、なんか飲み物ないの?」  蒲田に返事をする余裕も無くてただ痛みに顔を顰めるだけ。床に転がった僕の目には青柳先生の懐中時計しか入ってこない。  死にたい、そう思った。  こんな事を続けていく自信もない、こんな生き方を続けていく自信もない。  青柳先生に今すぐ会いたい、でも彼はもう静香さんが待つ家に帰っている。現実はやたらと生々しくて、胸の奥で欲するものにだけ靄がかかっている。  僕は何が欲しいのかこの時はわからなかった。ただ、それが自分にはほんの少しも無いのだけはわかる。 「これ食っていい?」  僕の返事も待たずにキッチンから聞こえてくる蒲田の声。鍋には野菜スープが作られていて、青柳先生と2人で食べたのを思い出す。  食器を鳴らしてまた蒲田はソファーに座ると、パチンコで負けた話を始めて僕は上の空でそれを聞いていた。  でも痛みは和らぐどころか激しさを増していく。  自身の鼓動がソコを刺激するようで激痛に冷や汗まで出てくる。
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