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きっと大丈夫。
絶対に大丈夫。
自分に言い聞かせて、明るいクリスマスツリーを眺める。
美しい電飾が暗い部屋を照らし、依存していたスマホの時間を無言で過ごす。
光弘叔父さんや真美さんとの一日が漸く終わろうとしているのに、感謝の気持ちよりもやっぱり先にくるのは青柳先生のことだった。
入院生活の中で何度も何度も青柳先生を求める夢を見て、周りが心配しているのに僕は何も感じない。
あるのは先生への想いだけ。
恐ろしいほど強い、恋心だけ。
泰子叔母さんが来てくれたのはそれから三日経ってからだ。
この三日の間に僕は忙しい真美さんの代わりに食事の支度をするようになって、入院しているお爺ちゃんに会いに行って。
相変わらず青柳先生一色の生活は続いていたけれど、やらなければいけない事が日常の中にあると達成感もある。
「やっと返してもらえるんだ」
「そんな言い方しないで、有を守りたかっただけなのよ」
泰子叔母さんが持ってきてくれたスポーツバックの中身を確認すると、待ちに待ったスマホを取り出して電源を入れる。
「うわ、凄いメールの数」
「誰から?」
「大丈夫だって泰子叔母さん、心配しなくても大丈夫だよ」
心配してソワソワする泰子叔母さんを宥め、未読メッセージや着信も確認していく。
「よくそんな早く出来るわねー?私なんてまだコレよ」
お茶を運んできた真美さんは泰子叔母さんにコレとガラケーを見せ、泰子叔母さんは僕と同じスマホをドヤ顔で見せる。
話す二人には見えないように青柳先生からのLINEを読んで、なかなか返事がない僕を心配する文章に心が熱くなった。
[スマホ取り上げられてて今日やっと手元に届きました。
青柳先生は大丈夫ですか?]
すぐに既読がつく。
[大丈夫だよ。
有は今、何処にいるの?]
顔が熱くて仕方ない。
[今、叔父の家なんです。]
[なら安心だ。ところで、明日なんだけど大丈夫?]
[大丈夫です。]
[良かった。無理するなよ]
[はい]
文章って難しい。
会話だとこんなに素気ない感じでは無いはずなんだけど。
ニヤけてくる顔を必死で抑えて、すっかり冷めた紅茶を一口飲み喉を潤す。
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