眠れぬ夜を抱いて

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「これ……な、に」  僕がバカみたいに泣き崩れている間、こんな事になっていたなんて知らなかった。   「真美さん!」  洗濯物を畳んでいた真美さんに詰め寄り、僕は画面を見せて問い詰めた。知っていたのに教えてくれなかった、こんな記事は全部嘘だ、光弘叔父さんが帰宅しても泣きながら訴えて、騒ぎを聞き付けた泰子叔母さんにも訴えて。  でも、文字は本当に強い。  どんなに中身が嘘でも先に出た方を皆信じる。そして週刊SKYに直接本人だと名乗り出て訴えても、軽くあしらわれるだけで小さな波ひとつ立てられない。  真実なんて無いのに、そこにある一滴にも満たない事実があれば何をしてもいいのか。でもこんな事、子供の僕がいくら訴えたところで痛い人間を見るように通り過ぎていくだけだった。  週刊SKYはクリスマスイヴに発売された。  あの日、あの朝、青柳先生はこんな事が自分に起きるのを知っていたんだろうか?  この週刊SKYの記事は瞬く間に世間を騒がせたようだ。結婚している男性教師が傷心中の男子生徒を襲ったのだから。泰子叔母さんも光弘叔父さんもレイプ後の僕を知っているから蒲田がやったとすぐに分かったが、一度出た物からは逃げることしか出来なかったと涙ぐんで何度も謝られた。    その時光弘叔父さんから、青柳先生が最後に連絡をくれたのは23日の夕方だったと教えてくれた。  篠原を面倒みてやってくれませんか、そう言ったと。真美さんもお金の事があって色々悩んでいたけど、実際に僕と会ってこの子を守ろうと即決したんだと。  高校は既に退学していて、僕はみんなに2年遅れて大宮にある高校を卒業した。
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