まろやかな心地と入学式

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まろやかな心地と入学式

奇跡や魔法があったらいいな。 なんて呑気に考えていた小学生時代。 好きなものは何?と聞かれたら リボンやレース、ふわふわで可愛いもの そんなピンク色な世界に溺れ 目が覚めないまま中学入学。 どうやら私の思考は人と少し違うらしい。 皆は誰々君が好き、あの人がタイプと話で盛り上がるけれど 残念なことに私にはその良さがちっとも分からなかった。 周りの皆は恋人ができて、楽しそうに笑うその姿を横目で見ながら、私自身には浮かれた事が起きないまま貴重な中学3年間を終えた。 寝癖を直しながら髪をまとめていく。 髪の毛を縛るゴムは“黒“だなんて、 なんで校則で決まっているんだろう。 せめて茶色も大丈夫ならこの髪につけてもそんなに浮かないのに…。 と、心の中で少し文句を言いつつ ヘアセットを終わらせていく。 耳より少し下で結った髪の毛は左右対称に綺麗に並んでいる。 俗にいうツインテール…、いやおさげかな?でも言い方が可愛くないからツインテールでいいか。 手櫛で毛先を整える。するとサラサラと手から髪がこぼれ落ち 窓から入る太陽の光を受け、栗色の髪は尚いっそう輝きを増した。 人と違うのは思考だけではなくこの髪色もそうなのだ。 「中学の時はそれでよく揉めたなぁ…」 とため息に混じりに呟く。 始めはクラスメイト、次に生徒指導の先生に呼び出しをくらい、先輩にまで目をつけられた。 その度に何度も何度も説明をし、小学校の卒業アルバムを見せ、何とか話はまとまった。 それをこれからもまた繰り返すかと思うと、憂鬱になる。 「せっかく可愛くしたんだから… 今日くらいは頑張らないとね。」 今日。人生で1度しかない日。 そう、今日はずっと待ち望んでいた 高校の入学式───。
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