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クーナに連れられて、ララティナは、図書館の奥に来ていた。クーナは本棚から一冊の本を取り出した。
「これがその本です」
「ありがとうございます」
本を渡され、ララティナは、驚いた。異様な気配がする。邪気のようなものが渦巻いている。
「クーナさん、何も言わずこの本を渡してくれませんか?」
「えっ!」
ララティナは、すぐに焼却すべきと判断した。中身を探って問題なければすぐに処分したいと思う程、嫌な感じだった。
「急に、どうしたんですか?もし、この本に何かあるなら、教えてください」
それはできなかった。魔女の秘密を言わなければならなくなる。しかし、放っておくことはしたくない。ララティナは、説得を試みることにした。
「詳しくは言えませんが、この本は危険です。手放した方がいい。この本がある限り、不幸は続きます」
「そうなんですか……でも、危険というなら、ララティナさんに渡すというのも、ダメです。責任を取って、私が処分します」
クーナは、思ったより、すぐに信じてくれたが、今度はララティナの心配をし始めてしまった。
ララティナはクーナがとてもいい人だと思った。こんな怪しいことを言っている自分を心配してくれるなんて。
しかし、この本に何があるかわからない現状、普通の人に処分を任せる訳にはいかなかった。
「えっと、クーナさん……はっ!」
「えっ!」
再び説得しようと思っていたララティナだったが、違和感に気付いた。
クーナの手から、本が落ちた。意思を持っているかのように蠢いた本は、ゆっくりと落ち、開いた状態となった。
「本が落ちた……?」
と、クーナが本を拾おうとに手を伸ばした、その時だった。
「きゃあ!」
本より伸びた植物の蔦のような物が、クーナの腕に巻き付き、本側へと引っ張った。
すると、クーナの腕が本に飲み込まれた。いや、腕だけではない。顔や体までどんどん吸い込まれていく。
「だめ!」
ララティナは、咄嗟にクーナの足を掴み、引っ張ろうとした。しかし、あまりに強い力には勝てず、ララティナまで本に吸い込まれていった。
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