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「良さそうね、さて、ここまでは師匠として、ここからは家族としての言葉よ」
そう言うとルルテアは、そっとララティナを抱き寄せ、
「ララティナ、正直に言うと私はとても心配なのよ。貴方には、魔女となるべき能力が備わっているとわかっているはずなのに」
と呟いた。
「ルルテアさん……」
「師匠としては失格かもしれないけれど、あえて言うわ。辛くなったら、いつでも戻って来ていいのよ。ここは貴女の家なのだから」
ルルテアは、優しくそう言った。その言葉は、ララティナにとってとても心強い言葉だった。
しばらくの沈黙の後、
「いけないわね、師匠の私が、こうでは。ララティナ、気を付けて行くのよ」
と言い、体を離す。
いよいよ旅立ちの時だ。ララティナは、帽子とマントを身に着け、箒に跨る。
「行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
「気を付けなよ」
ルルテアとハクジャに見送られ、出発する。
大地を蹴ると体が浮き上がる。重心を前に向けると、そのまま前へと進んでいく。前に進んだら、振り返らない、寂しくなってしまうからだ。
「ララティナよ、どこへ向かう?禁術の在り処はわかっているのか?」
「えっとね、まずは近くの町で、手がかりを探してみようと思ってる」
シュバルツに聞かれとりあえず、今の計画を説明する。
ララティナは、頭の中で地図を思い浮かべながら、口を開いた。
「ここから西に行くと、タルブという町があるの。この近くなら一番大きな町だと思う」
「なるほど、いい案だろう」
シュバルツは、極めて冷静に答えてくれる。
「にしても、何だか安心したな」
箒で飛びながら、ララティナは、呟いた。ララティナの体はマントの力によって外部からは見えていない。
「何のことだ?」
「シュバルツがいい人そうで、よかったってことだよ」
そう言うと、シュバルツは少し沈黙した後、
「いい人という訳ではない。我と貴様は、契約関係にある。貴様を守ることが我の使命だ。ギブアンドテイクというものだ」
と、冷たく言い放った。
「ま、まあ、それでもいいけど」
ララティナは、あまり納得できなかったが、気にしないことにした。
スピードを上げ、町を目指す。
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