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「ふふふ♪明日は何着ていこうかな?ねぇ、マロンちゃん。」
あんなに小さかった幼なじみが、すっかり立派な高校生になってて、光優はまるで弟の成長を嬉しく思うように感じていた。
あれこれ引っ張り出した光優は、小一時間悩んだ末、シンプルなモノトーンの服にしたようだ。
『明日は、俺が居なくて大丈夫か?犬のみゆと二人だけか?着いていっても良いぞ?』
マロンはウキウキする光優の膝で心配そうに見上げた。
今日会った奴は大丈夫そうな感じだが、何だかとても嫌な予感がするのだ。
猫の第六感というのか、マロンの危険予知は結構高かった。
『はっ!!マロンちゃん、もしかして何か有りそうって分かるの?……わかった!!明日は僕が網戸に孔開けるから着いてきて!!』ピスピス……
仔猫と仔犬は、飼い主の光優のボディーガードとして着いていく為に、本人(?)達は物凄く真面目に脱走計画を立てていた。
次の日みゆを連れて、徒歩で十分の近くの公園に出掛けた光優を、コッソリつける焦げ茶色の小さな影があった。
一方その頃、掃除機をかけていたら家の網戸の隅に、捲らないとわからない大穴を見付けた美彩緒が、叫んでいた。
「ちょっと!?網戸にこんなに穴が!!お義母さん、大変よぉ!!」
「不味いよ、マロンが居なくなっているじゃないの!!」
「何っ!?光優に着いていったのか!?万が一、迷子になったら大変だぞ!!アイタタタ……」
焦げ茶色の仔猫の姿がさっきから消えていると、碧も大慌てで家中探し回った。
足にヒビの入った光輝を置いていくわけに行かず、美彩緒はサンダルを履くと急いで光優の行くと言っていた公園に向かった。
『ふぅ……無事に公園のドッグランについたな。俺も合流するか。いや、影から護衛するのだ、俺は我慢せねば。ボディーガードだからな!!』チラチラ……
『あれ?マロンちゃん、来ないのかな?あそこに居るの、マロンちゃんだよね?』テクテク…
ドッグランに着いたら、しばらくして昨日の高校生も来たので、仔犬のみゆは近寄らないマロンに不思議そうに近づいて行った。
『どうしてそんな所に隠れてるの?お兄ちゃんはあっちだよ?一緒に居ないと迷子になるよ?マロンちゃん、小さいから……』
『………くっ。犬と猫の成長の違いか。見付かっては仕方ない、行くしかないか。』チョコチョコ……
自分はまだまだ仔猫、既に中型犬サイズのみゆとはパワーからして違うのだ。
針のような爪の一撃には自信が有るが、体を持ち上げられると誘拐されてしまう。
ハードボイルドな仔猫の、影から光優を護衛する計画はくじけてしまい、渋々光優に向かって歩き出すのだった。
「え、ええっ!?マロンちゃん、脱走して着いてきてたのかい!?いくら近所とはいえ車が通って危ないよ。」
『すまん。折角の仲間との集会を邪魔したな。』ニャーン
あたふたとマロンを抱き上げて、コートの懐に入れる光優。
それを見ていた伽藍は、少し目を見開いたものの、仔猫なら隙間から脱走も有り得る、と思い直した。
よもや、足元でお座りしているデカイ仔犬も共犯とは思ってないだろう。
「………それで、池田のじいさんが出歩いてないのは、怪我してたからか。良いのか?逆恨みされるかも知れないんだろう?」
「うん、でも僕はその人達に顔が知られてないから、この子も別の犬として振る舞えば大丈夫そうかなぁ……。」
ずっと忙しくて家に帰省出来てなかったのが、逆にラッキーだった。
それでも、遠くの河原は避けて、人の多い公園を待ち合わせに選んだのだ。
近くに交番も有るので、こんなところで絡んでこないと思われた。
「伽藍ちゃんは小学校に上がる前に引っ越したけど、どうだった?ちゃんとお友達出来た?君は、いつも僕の後を着いてきてたから……」
「問題ない。転校で切れる縁ならそれまでだ。気の合った数名とは連絡を交換している。」
転勤族ゆえに、慣れた頃にまた引っ越しというのも珍しくなかった伽藍は、その辺は達観していた。
ポツポツと昔話から近況報告まで和やかに話して、合間に仔犬にボールを投げてやっている。
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