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こんにちわ!!→出会い頭に噛られた(笑)
俺が憶えているのは、微かに俺の名を呼ぶ幼い声と暗い場所に押し込める大きな手。
気付いたら、鬱蒼とした山に取り残されていた事。
何日も彷徨って腹ペコで草むらで震えていたら、突然身体を持ち上げられた。
『何しやがるテメー!!気安く触んじゃねぇ!!』ガブッ!!!!
「あいたー!?何やコイツ、元気じゃね!?」
持ち上げたヤツに思い切り噛み付いたら、悲鳴をあげたけど、分厚いフカフカのせいでダメージは無かったようだ。
チッ…………運の良い奴め。
ソイツは俺を布でグルグル巻きにして懐に入れると、さっさと鬱蒼とした山を後にした。
勿論、俺はやたらと暖かくてふわふわなその布をカジカジして、ボロッボロにしてやったのだ!!
ふふん、これで少しは参っただろう!!
だから、詫びとして、このボロッボロの布は貰ってやる!!
ふふふーん♪……………グゥ……スピー
「なぁなぁ、光優どうしよう?俺のアパート、ケージで飼える小鳥とかの小動物以外、ペット不可なんだよぉ。なのに、ほら、コレ!!拾っちゃったぜ。こんちくしょー、可愛いな!!!」
「………いやいや、隼人君。どうしようも何も、大家さんに正直に言って、里親探すまでっていう条件で許可貰うか、何でもペットOKな物件に直ぐに引っ越すしか無いよ?」
目の前に座る友人が、俺と同じように困ったように眉を潜めると首を傾げた。
まあ、聞かなくても知ってた。うん、そりゃそうだよな?
俺、吉行隼人が仔猫を拾ったのが、大学から近い自然公園の草むらだった。
当然、横にはコイツもいたから事情は知っている。
そこは木々も鬱蒼としていて、ちょっとした森の雰囲気を味わえるハイキングコースとして、昼間は人気だった。
よく大学の構内移動の抜け道として利用していたが、今回はピャーピャーと鳴く声と見慣れない段ボールを見付けたのだ。
声の主を探すと、近くをヨロヨロと茶色と黒のまだら模様の塊が動いていたのだ。
「丸洗いして獣医さんに診せたら、幸い捨てられたばかり、数日くらいで病気も寄生虫もないって言ってたし、大学構内に里親の貼り紙でもしようよ。」
現実問題、俺がブチキレた大家さんに追い出されるのが先か、里親が見つかるのが先か、どっこいどっこいだと思う。
そして、友人は綺麗な顔を曇らせたまま、心配そうに続けてこうも言った。
「ただねぇ、拾った君と、餌をくれると思っている僕以外に、姿を見せてくれないんだよねぇ。」
「ああ、そうだよな。今だって尻尾の先しか見えんな。」
仔猫は、隼人の脱いだ上着の中でマフラーを抱えて引きこもってる真っ最中だった。
「しかも警戒心強すぎるのか、威嚇するし、咬むし、引っ掻くし。ちょっと目付きが鋭いから、将来は格好良い子になりそうだけど……」
『ん?なんだよ、俺の顔をじろじろ見てんじゃねぇぞ。パンチするぞ!!』フゥー……フシャー!!
困ったような顔の光優の視線の先で、鼻先を覗かせて威嚇するのは朱茶色と黒の混じったサビ柄の仔猫だった。
隼人の側の上着に隠れて、尚且つピッタリと座っている隼人の太股辺りにくっついている。
緑掛かった金色の目は控え目に言っても鋭く、正直に言えばメンチ切ってるくらい目付きが悪い。
慣れない場所で緊張しているのもあり、般若のような顔でシャーシャー言っている。
((ちっちゃい~。般若顔、可愛いな~。))
コイツ等には逆効果だったが。
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