二章 It`s a piece of cake

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何回倒れてもすぐに起き上がる青山くんも席に座り、わたしたちは揚げ物料理を食べました。 サクサクと香ばしい香りと共に、たっぷりの肉汁が喉に流れ込むだけで、涙が出そうでしたが、何とか耐えてお味噌汁を吸い、何度も何度も咀嚼を繰り返しました。 とんかつ。エビフライ。カキフライ。賞味期限切れの弁当では、こんなにサクサクの揚げ物なんてあり得ません。本当に美味しいです。 この時のために生きててよかったと思えるほど、美味しくて堪りません。 「ったく、小鳥遊先生ももう少し宿題減らせばいいのによ、なんでまた増やそうとしてんだろ」 「何言ってんのよ。受験生でしょあんた。勉強しないでどうすんのよ」 「どうせ面接だから良いよ。南星大学だったら香椎山高校ってだけでまず受かるし」 「香椎山高校生でも、赤点ばっかだと受からないかもしれないわよ。少しはゆんゆんちゃんを見習ったら? 高校で一番頭良いんでしょ?」 「うるせぇよ。ゆんゆんは特別過ぎるんだよ。あんな化け物ばっかの学校で成績一位なんだから」 個人的に言わせてもらうなら、毎日予習と復習を繰り返しておけば、高校一年の終わりまでには、高校で習う全ての学習は修了するので、青山くんのそれはただの甘えです。 というか他のクラスメイトも、どうして今必死に勉強するのでしょう。ずっと必死に勉強すれば、後々困らないというのに。 「そんなこと言ったって、どうするのよ。ゆんゆんちゃんはもっと上の大学に行っちゃうよ? 離れ離れになっていいの?」 「あっ……た、確かに。なぁ、ゆんゆんはどこの大学に行くんだ?」 「えっ」 2人が話す隙にとんかつの2個目を企んでいましたが、不意に話が飛来して、少々動揺しました。 「志望大学だよ。それとも、留学とか? ゆんゆんはすげえから、起業とかしたりしてな」 「うんうん。きっと大活躍だよ、ゆんゆんちゃんなら。政治家とか向いてるんじゃない?」 「ははっ、確かに良いかもしれねえな」 わたしの、進路先。わたしの進路先は……。 「……まだ、決めてません」 「え、まだ決めてないのかよ? さすがゆんゆん、余裕だな」 「ねぇねぇじゃあ、ゆんゆんちゃんの将来の夢って何なの?」 咄嗟にかわしましたが、別の質問が飛び込んできました。 適当に答えても良いのですが、さすがに、わかりません知りません、で答えるのにも限界があります。 わたしの、将来の夢ですか。
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