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「……わたしの将来の夢は、幸せになることです。平凡に、他の人と同じように、小さな幸せを感じながら、生きることです」
これは嘘ではありません。わたしの本当の夢です。
高校一年生の頃に、思い描き、諦めた夢です。
聞いた2人はどんな反応か気になって、ちらりと顔を上げると、2人は少し驚いたように目を見開きました。
──どういう反応なのでしょうか、これは。一応謝っておいた方がいいかもしれません。
「……ごめんなさい。少し真面目に答えてしまって。でも、わたしの夢といってもそんなくだらないもので……」
と、言い訳がましいことを話そうとすると、お姉さんが口を挟みました。
「でも、今は幸せなんじゃない? ゆんゆんちゃん」
「えっ?」
そんなことない、と口をついて言うところでしたが、喉元に留めました。
「だって、ご飯食べてる時のゆんゆんちゃん、すごく笑顔なんだもん。あと、守と話してる時のゆんゆんちゃん、気付いてないかもしれないけど、口元が緩んでるの。きっと楽しいんだろうなって思うわ」
「い、いえ、そんなこと……」
「あ、でも気をつけてね。ゆんゆんちゃんは気持ちを押し殺して過ごしがちなタイプだから。そういう人は本当の幸せに気付かずに死んじゃうの。我慢ばっかりしたらだめだよ。後ですごーーーく酷い目に遭うから」
まるで実体験のように語るお姉さん。わたしはその話を聞き流す予定でしたが、すっかり聞き入ってしまいました。
──本当の幸せに気付かない? それは、どういうことなのでしょう。
「あの、それって……」
「うまい!! ビール!! ほら、守!! ビール取ってきなさい!! なくなっちゃったから!!」
尋ねてみようとしましたが、わたしが思慮に耽っているうちに、いつの間にお姉さんがビール缶で出来上がってしまい、話を聞くことが困難になってしまいました。
「……後で、酷い目に遭う、ですか」
一体、何のことでしょう。頭を必死に働かせましたが、何も想像することができませんでした。
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