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『ねぇ、ほら。おいで』
「……」
『怖くないよ。ほら、こっちにおいで』
「……」
『何も痛いことしないし、嫌なこともしないよ。さぁ』
「……」
『あ、大丈夫だよ。リングがあれば、空中でも浮くことができるから。動いても平気なんだよ』
「……」
『……あ、あの? 聞こえてるよね? さぁ、わたしの頼りがいのある胸に飛び込んでおいで』
「……」
『って、なんちゃって! 頼りがいなんてねえよ! 断崖絶壁すぎてむしろ心配だよ! ってツッコむとこだったりして。あはは。って誰が断崖絶壁やねんっ!』
「……」
『お、おーい。優衣ちゃん? は、反応してくれなかったら寂しいなとか、わたし思っちゃったりして。何が悲しくて自虐ネタまで言ってるんだとか、勝手に落ち込んだりして』
「……」
『……』
「……」
『……』
「……」
『……ごめん、帰るね』
一人で盛り上がっていた謎の存在は、酷く不貞腐れたようにうなだれて、光と共に夜の風景に溶け込んでいき、消滅しました。
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