二章 It`s a piece of cake

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この世に生まれて18年。わたしの記憶がある中で、一番の大声を上げました。 滅多に開かない眼が、限界まで開いています。こんなことも初めてでした。 「ちょっ! 声大きいって! 静かにしなよ!」 「ま、待ってください!! し、親友? わたしと、つ、紡木さんのことですか!?」 「はぁ? 他に誰がいるのよ? バカじゃないの」 慌てて紡木さんに確認します。そんなわたしと対照的に、紡木さんはさも当たり前のことのように、きょとんとしていました。 ──これはどういうことでしょう。昨日から本当に意味不明なことばかり起きて、生きた心地がしません。寿命が本当に近づいてきているのでしょうか。 「で、では……わたしたちは、いつ親友になったのですか?」 「いつって、覚えてないの? こないだの期末考査の時だよ」 「期末考査の時……」 期末考査の時といえば、確か他のクラスメイト曰く、成績順位1位だったわたしに対して、2位だった紡木さんが嫉妬し、それからわたしを虐めるようになった出来事です。 「あの時、あたしがあんたに話しかけたじゃん! 次は負けないって! そしたら神山、頷いてくれたよね!」 全く覚えていません。クラスメイトの有象無象の一人と認識して、適当に対応したものだと思われますが、そんなことを言ってしまえば怒りに火をつけてしまうので、思い出したふりをしました。 「そ、そうでしたね……えっと、それで、どう親友に繋がるのですか?」 「えっ、だから、あたしと神山で会話したじゃん。だから、親友」 「えっ!?」 ──もしかして、もしかしなくとも。紡木さんは、わたしが思っていた以上の存在だったのかもしれません。 その可能性が頭に浮かび、戦慄しました。 「……もしかして、それだけの理由で、ですか?」 「い、一回話したら親友って、本に書いてあったし! だから親友だし!」 「それだけの理由で親友と思っていたのですか!?」 「そ、それだけって! いつも話しかけてるじゃん! 昼休みとか偶然会ったときとか!」 「あれは親友だから話しかけていたのですか!?」 この、紡木さん。間違いありません。 「……だって、友達いないあたしと会話してくれたの、神山だけだったし。だから、親友なんだし……」 彼女は、わたし以上の、ド話下手さんだったのです。
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