二章 It`s a piece of cake

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眠ったままの頬っぺたにビンタをお見舞いして、ぴりぴりと痺れる頬っぺたを抑えながら階段を降りてくると、青山くんのお姉さんも既に起きていました。 ジュージューと、香ばしい匂いと共に水が弾ける音が聞こえてきます。 「おはよー、ゆんゆんちゃん。ほら、テーブルに朝ご飯置いてるから、座った座った」 お姉さんはエプロンを着用して、フライパンで目玉焼きを作っていました。ちなみにテーブルに目をやると、3人分のご飯とお味噌汁に、ボウルに盛られたサラダが置いてありました。 既に青山くんは席に座って、朝ご飯を食べています。 「……あの、すみません、お姉さん」 「はいよー。何?」 「本当に、わたしも食べていいのですか? いきなり居候になったのに」 「いいわよー、そんなの別に。それにその台詞は、昨日の晩ご飯を血眼になって食べていた時に聞きたかったわー」 「そ、それは……ごめんなさい。本当に美味しかったので」 「ふふ、嘘よ嘘。よっぽど我慢してたのね。何があったか知らないけど、美味しいご飯を食べる権利は、誰にだってあるのよ。ほら、冷めないうちに食べちゃいなさい」 「は、はい……」 おずおずと、席に座って手を合わせてから、味噌汁の入ったお椀を持ち、ゆっくりと食べ始めました。 豆腐にレタス、椎茸が野菜出汁で優しく煮込まれています。朝だから胃に優しいように調理されていて、お姉さんの愛情を感じました。 ご飯ももちろんほくほくで、30回は噛んで飲み込むように気をつけました。だんだんと染み出すご飯の甘味が、じんわりと身体を温めていきます。
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