二章 It`s a piece of cake

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「さて、目玉焼きもできたわよー。ほら守! 食ってばっかないで全員分の皿こっちによこしなさい」 「あいよ。待ってました、目玉焼き。姉ちゃんは醤油でよかったっけ?」 「あー、今日はマヨネーズにしてみるわ。なんかこないだ友達が食べて悶絶してたから」 「ま、マヨネーズ!? マジかよ、流石にそれは真似できねぇ……」 「お子様は大人しく醤油でもかけてなさい。ふふっ」 青山くんとお姉さんは、仲良くお喋りをしながら朝ご飯を食べます。 美味しいご飯。温かいお喋り。 昔を思い出して、胸がキュッと詰まりました。詰まった胸をほぐすように、オレンジジュースを一気に飲み干します。 ──そうです。わたしにも、こんな時間があったのでした。 3年前。まだお父さんが生きていた時。 わたしとお父さんは、この2人のように仲良くお喋りをして、至福の時間を楽しんでいたのでした。 「あ、ゆんゆんちゃんは目玉焼きに何かける? うちには醤油からソースに加えて、塩にマヨネーズにケチャップ、マスタードや海苔の佃煮など多彩なラインナップが揃ってるけど」 思い出に浸ろうとした瞬間、現実に引き戻されました。青山くんのお姉さんが話しかけてきたのです。 ──というか、それよりも。 「あの、お姉さん。申しにくいのですが、どうして〝ゆんゆんちゃん〝と呼ぶのですか?」 「ん? だって呼びやすいから。それだけだよ」 「呼びやすいって……言ってて恥ずかしくないですか? こんな恥ずかしいあだ名」 「そんなことないわよー。それに、守がいっつもゆんゆんちゃんのこと話してるから、それで定着してるのよ。今日ゆんゆんがー、とか、ゆんゆんのこと守りてえとか、いろいろ聞いてるから」 「えっ?」 「ぶっ!!?」 青山くんが大量の米粒を吹き出しました。そしてその粒が、正面に座っていたお姉さんの右手にたくさん命中しました。 「うわっ!? 汚っ!! 何すんのよ守!?」 「こっちの台詞だよ!! 何言ってんだよいきなり!?」 「何って、ふふ、あんたいっつも言ってるじゃない? 俺のゆんゆんがー、とか、彼女になってどうしようとか、後は……」 「うわー!!! マジでやめろって!!!」 愉快なことに朝から喧嘩も始まりました。 本当に、平和な家庭で、心が豊かになっていくのを感じました。
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