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「さて、目玉焼きもできたわよー。ほら守! 食ってばっかないで全員分の皿こっちによこしなさい」
「あいよ。待ってました、目玉焼き。姉ちゃんは醤油でよかったっけ?」
「あー、今日はマヨネーズにしてみるわ。なんかこないだ友達が食べて悶絶してたから」
「ま、マヨネーズ!? マジかよ、流石にそれは真似できねぇ……」
「お子様は大人しく醤油でもかけてなさい。ふふっ」
青山くんとお姉さんは、仲良くお喋りをしながら朝ご飯を食べます。
美味しいご飯。温かいお喋り。
昔を思い出して、胸がキュッと詰まりました。詰まった胸をほぐすように、オレンジジュースを一気に飲み干します。
──そうです。わたしにも、こんな時間があったのでした。
3年前。まだお父さんが生きていた時。
わたしとお父さんは、この2人のように仲良くお喋りをして、至福の時間を楽しんでいたのでした。
「あ、ゆんゆんちゃんは目玉焼きに何かける? うちには醤油からソースに加えて、塩にマヨネーズにケチャップ、マスタードや海苔の佃煮など多彩なラインナップが揃ってるけど」
思い出に浸ろうとした瞬間、現実に引き戻されました。青山くんのお姉さんが話しかけてきたのです。
──というか、それよりも。
「あの、お姉さん。申しにくいのですが、どうして〝ゆんゆんちゃん〝と呼ぶのですか?」
「ん? だって呼びやすいから。それだけだよ」
「呼びやすいって……言ってて恥ずかしくないですか? こんな恥ずかしいあだ名」
「そんなことないわよー。それに、守がいっつもゆんゆんちゃんのこと話してるから、それで定着してるのよ。今日ゆんゆんがー、とか、ゆんゆんのこと守りてえとか、いろいろ聞いてるから」
「えっ?」
「ぶっ!!?」
青山くんが大量の米粒を吹き出しました。そしてその粒が、正面に座っていたお姉さんの右手にたくさん命中しました。
「うわっ!? 汚っ!! 何すんのよ守!?」
「こっちの台詞だよ!! 何言ってんだよいきなり!?」
「何って、ふふ、あんたいっつも言ってるじゃない? 俺のゆんゆんがー、とか、彼女になってどうしようとか、後は……」
「うわー!!! マジでやめろって!!!」
愉快なことに朝から喧嘩も始まりました。
本当に、平和な家庭で、心が豊かになっていくのを感じました。
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