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「も、もうそろそろ急がねえとな! 御馳走様! あぁ忙しいなぁ!」
大根役者でも失笑するほどの演技をしながら、青山くんはドタバタと音を立てて洗面所に行きました。
お姉さんは、苦笑いを浮かべてわたしに向き合います。
「ごめんね。あいつ結構ガサツな割に、妙に照れ屋なとこあるの」
「……はい。それはよくわかります」
「あ、やっぱりやらかしたの?」
「お弁当やパフェの食べさせ合いの時に、青山くんはウサギのように逃げ出すのです」
「……あんた、顔に似合わずなかなか大胆なことするわね」
「そ、そうでしょうか?」
わたしとしては、カップルとしてやる常識的なこととして捉えているのですが……。
学力については心配ないのですが、社会常識については自信がないため、もう少し勉強しなくてはいけませんね。
「さて、御馳走様。歯磨きとかは昨日あげたやつ使ってね。シャワーとかも浴びたかったら使って。あたしはもう行くから」
そう言って、お姉さんは手早く着替え始め、一瞬にして大人の色気が漂うビジネスウーマンに変身しました。
「お姉さんは、もう行くのですか?」
「うちんとこ、仕事早いんだー。まあでも、守も6時には出発するから、ゆんゆんちゃんもあと30分で準備したほうがいいわよ。シャワーとか浴びとく?」
「い、いえ……結構です」
「そ。まぁ遠慮なく使ってねー。あと──おい守! ゆんゆんちゃんきちんとエスコートしてきなさいよ! わかった?」
「うるせえよ!! 早く行けって!!」
そして、お姉さんは出て行き、わたしも手早く準備を終えて、青山くんと一緒に家を出ました。
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