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──って、いえいえそんなことより。この風情のないアホ彼氏のことより。
「早く、早く食べましょう、青山くん。お弁当が冷めてしまいますよ」
「いや、元から冷めてるけど……」
「旨み成分が消えてしまうのです。早く、食べましょう」
「ちょ、待てって! うわっ、勝手にバッグを漁るなって……」
わたしはもう待ち切れなくなって、青山くんのバッグからお箸を抜き取ってしまいました。
「美味しいお弁当、いただきます」
「あ、あぁ。いただきます」
「仲良く食べさせ合いましょう。青山くん」
「……努力する」
そして、唐揚げに箸を伸ばしました。
その時です。
「ちゅうもーーーーーく!!!」
突然大声で、紡木さんが叫んだのです。
和やかな会話を楽しんでいたクラスメイトたちが、一瞬にして静まり返り、何事かと彼女の方に視線を向けました。
わたしはもぐもぐと唐揚げを頬張りながら振り返りました。
「突然だけど! みんなにお知らせ! 大事なことだからよく聞いてて!」
紡木さんは、いつものイライラとした表情ではなく、幼稚園児がクレパスで描いたようなにこにこ笑顔で言いました。
「えーっと! 今週の日曜日に、あたしの家で誕生日パーティをするよ! あたしの18歳の誕生日だから! あたしの誕生日パーティ! みんなちゃんと覚えてるよね!」
誰も覚えていないのか、声を上げる人はいません。ですが紡木さんは気にせず続けました。
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