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「……まだ俺は、信用されてないのか……」
「痛っ……はぁ、はぁ。ごめんなさい。今、何か言いましたか?」
「何にも。ほら、喋ったら余計にひどくなるだろ。静かにしてろよ」
少し不機嫌な顔をした青山くんは、ベッドのそばに椅子を寄せて、どっしりと重い腰を下ろしました。
こんな暑い日に重い荷物を抱えて帰ってきたので、青山くんの身体は汗ばみ、カッターシャツが微かに透けていました。青山くんも暑さのあまり、手うちわでそよ風を起こそうとしています。
──ですが、なぜか彼は。
「……あの、青山くん」
「ん、何だよ。お喋りならしないぞ」
「いえ、そうではなくて。今、とても暑いですよね?」
「あぁ、暑くて死にそうだわ。本当に夏ってのは暑ささえなけりゃ楽しい季節に決まっているのに……」
「だったら、その長袖、脱いだらどうですか?」
──青山くんは、こんなに暑いというのに、いつまでも長袖を着ているのです。
それどころか、腕を捲ろうともしないのです。
「あ、あぁ、なんだそのことかよ。ゆんゆん知らねえのか? 暑い時こそ、長袖を着た方がいいんだぜ?」
「えっ、どうしてですか?」
「テレビで観たんだけどな、砂漠では半袖じゃなくて長袖の方が水分のヘ減る量が少なくなるし、体温も上がりにくくなるんだよ。だから、それを真似してるんだ。へへっ、皆は馬鹿みてえに半袖着てるけど、本当は長袖の方がいいんだぜ」
「へえ、そうだったのですか。青山くんは頭がいいですね」
「ふん、まあな。ゆんゆんも知らなかったんだろう」
「ええ。砂漠で長袖を着るのは太陽光から肌を防ぐためであって、砂漠に比べて直射日光の少ない香椎山市や、陽が差し込まない屋内では恩恵が少ないですし、それに日中のほとんどをクーラーのない屋内で過ごすわたしたちにとって長袖でいるメリットなんてネズミの涙ほどもないかと思っていましたが、青山くんはそうじゃないんですね」
「……」
「ありがとうございます、青山くん。勉強になりました。ところで、何で今そんなに恥ずかしそうな顔を浮かべて……」
「うるせえ! お、お喋りなんてしねえって言っただろ!? 早く寝ろ!」
青山くんはなぜかぷんぷん怒って、部屋から出て行ってしまいました。
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