小学生時代

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「さあさあっ!着いたわよ~!」 …東京到着。まさか自分が来るなんて想像してなかった。ぼーっとしてるうちにタクシーに乗っていた。空港から直接モデル事務所に向かっているみたい。  「え、有太?緊張してるの?」  「な、なんでだよ。ただの見学なのに…」  「そ?まあいいわ。ぎゃあぎゃあ騒がないでよねーお願いだからっ」  「ありえねぇから」  「あっはっはっ…あら、もう着いたわよ!」  「えっ。まじで?早いね…」  話しているうちに、着いてしまった。 その勢いで事務所へ入った。  「ども~お疲れ!うちの弟連れてきたわよ~!」  「あら、加奈じゃない。…ん?弟?」  「そうよ。ちっちゃいでしょ?」  「…そうねぇ。小学生かな?」  「は、はぃ」  「お名前は?」  「ゆ、有太です」  「かわいい子ね。私は日ノ原恵っていうの。よろしくね」  「えっ、あの有名な!?」  姉ちゃんの載ってる雑誌で見たことある。よく表紙に載ってたから覚えた。  「有名なのかしら?どうなの、加奈?」  「知らないわよそんなことー。自分のことでしょ~?」  「なーんか有太くん、加奈の声にそっくりねぇ~」  「全然似てません」  「あらら?仲良悪いの?」  「そうじゃないわよ?有太は緊張してるんだから。そうでしょ?」  「…し、知らない」  「有太くんかわいいわね」  「日ノ原!もーからかわないの!!」  「別にからかってないわよ」 …超有名なモデルと話をしてる自分が信じられない。夢なのか?いや、現実だよ。なんなんだよこの状況は。 「有太、あんたとりあえずーここに座って見ててね~」  日ノ原さんと別れて、部屋の隅に置いてある椅子に連れて行かれた。  「はぁい」  「あ、そうだー!私のカメラマンにも有太紹介しとかなきゃね。もうすぐ来るし」  「え、なんで?」  「いいから!あ、長山さーん!うちの弟です!」  姉ちゃん は入口のドアから入ってきたおじさんに声をかけた。  「小暮くんに弟がいたとは…知らなかったよ」  「ええ。公表してなかったので」  「…それで、なぜこんなところに連れてきたん…」  「今日から毎日見学させますね!」  「…社長には許可を取ったのかい?」  「いいえー。忘れてました」  「君は…まずどうして弟をここへ連れてこようと思ったんだい?」  「えっ?それはー春休みだし、有太を家に1人おいてくるのが可哀想だったからですが…何か?」  「…事前に許可を取るべきだと思うのだが」  「ああ!すみません」  姉ちゃん自由過ぎる…。こっちが恥ずかしくなるよ。いつもこんな感じなのかな? そんなのヤバいから…。しかも仕事場の人も姉ちゃんを強く怒らないしさ。なんかここで仕事やりたくないかも。…て、何の仕事しようと思ってんだよ! 弟が来ることも知らせてなかった姉ちゃんだったけど、撮影が始まった。  姉ちゃんはなんかバッチリメイクで誰だかわかんなくなっている。まるっきり別人?カメラのシャッター音が聴こえてくる。 それからまぶしいフラッシュ。緊張感が漂っている。 さっきまでとぼけていた姉ちゃんだったけど、顔の表情も全然違う。 …やっぱりモデルってすごい仕事なのかもしれないなぁ。 いや、こんな表情してる姉ちゃんにさせるんだから一番すごいのってカメラマン?  収入もよさそうだし…。 カメラって難しいのかな? もしかしたらできたりしないかなぁ…なんて考えてみたりした。…てかなんでカメラマンに魅力を感じてんだよ! …魅力感じてるのかな…?  「有太~!今日の撮影は終了よ~!暇だったでしょ~?ごめんね?」  「べつに。それより、カメラって誰でも使えるものなの?」  「は?カメラなんて使えるに決まってるわよ!…勉強すればだけどねぇ」  「ふぅ~ん。どういう勉強すればいいの?」  「…え?あんたカメラに興味あるの?」  「う、うん。なんとなくだけど」  「へー有太が興味を持つなんてめずらし~!加奈がその意欲を消さないように頑張って資料探してあげる」  「えっ!ま、まだそこまでやる気があるわけじゃないんだけど…ってどこ行くの!」  姉ちゃんはどこかへ消えたが、すぐに帰ってきた。  「ほ~らあったわよ!加奈偉くない!?」  「…ま、まじで持ってきたし…!」  「明日からこれ読めば暇潰しになるでしょ?こんなこと考えられるなんて、加奈って天才!」  「…バカじゃん」  「ちょっと~有太!そんなこと言わないの!お礼言いなさい!」  「あ、ありがとう」  「よしよしっ!いい子だ!」  「子供扱いしないでよ」  「あはは!だってガキンチョじゃん!小学生だし~?」  「もういいよ!」  「あっ!怒った~!」  「それより、もう仕事ないんでしょ?帰ろうよ」  「そうね~!激安ホテル探してみようねぇ」  「…まだ探してなかったの?」  「だって急だったし~?」  「…見つからなかったらどうするの…?」  「まあ~あるでしょ。多分!」 えぇ~野宿になりそうな予感…。こ、怖いよ~。姉ちゃん宿はしっかりしてよ! そんな中探した宿は、激安ではさすがになかった。でも野宿するよかいいよね?  一週間も泊まるからお金がなくなりそうだよ。それもまた怖いよ。
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