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曽我と藪
ゆっくりとマンションを見上げ、曽我と藪は銃を背中に差し込む。二人はマンションのエントランスに歩いていく。
「エルモアレナードの犯罪小説なんだけどよ」
曽我がエレベーターに乗った瞬間話しかけた。
「あぁ、ラムパンチか?」
「タランティーノのジャッキーブラウンの原作な、カッケーよ、藪も読んでみろよ」
「ジャッキーブラウンは観たよ、俺はパルプフィクションの方が好きだ」
藪はそう言って煙草を咥えた。
「まぁ、異論はないな、俺もパルプフィクションは好きだ。レザボアドッグスとかな」
曽我もそう言って煙草を咥えた。
「こういうシーンでもナイスな音楽がかかるんだよな」
「俺がジョントラボルタなら藪はサミュエルLジャクソンか、もしくは逆」
「曽我、クライムが好きなだけだろ」
チンと音が鳴る。ついた。二人はゆっくりエレベーターから降りて目的の部屋へ向かう。
「映画で思い出したけどボスに借金した映画館はどうなるんだろな?好きなんだけどなシネコンより」
「オーナーがクズだ」
ゆっくりと部屋の前に二人は立つ。
背中に隠していた銃を持った。
曽我がチャイムを押す。
しばらくすると男が出てきた。
「田宮?」
藪が確認する。田宮はうなずく。
「金は?」
曽我が聞く。
「すいません、もう少し···」
パンッと音が鳴る。藪が田宮の額に銃を向けていた。煙が漂う。田宮は倒れた、血が出ている。
「おい藪、早いだろ、何か言わせろよ」
曽我が藪に向かって言った。
「返せないなら殺せって命令だったぞ」
藪は言った。
「あぁ、ボスはそう言ったよ、でも何か言いたいだろ?例えば言い残す事はあるかとかよ」
曽我はチッと舌打ちした。
「死人に口なし」
藪が煙草に火をつける。
「藪、いつもそうだよ。まぁ、まぁ、いい、死人に口なしだ、帰るぞ」
曽我は煙草に火をつける。不満そうにエレベーターへ向かう。
藪もエレベーターへ向かう。
「パルプフィクションのコンビみたいにはいかないな」
藪は言った。
「あぁ、そうだな」
曽我は吐き捨てた。
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