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すぐに楓は見つかった。体育館の途中にある公園のベンチに腰かけていた。
その表情はうつ向いて寂しそうで、線の細い顔立ちなだけに哀愁が漂っていた。
「どうした?」
不意の声に驚いたようで、楓は勢いよく頭部を上げてオレを見上げた。
オレだとわかると安心したのか強張る表情を緩めた。
「ん……ホームシックかな……」
ハスキーな声で、ポツリと呟いた。
オレにも経験がある。コイツの気持ち、わかる気がする。
一人暮らしに馴染めなくて家族とか地元の友人とかに電話なんかしょっちゅうしてた。
まして遠距離と言うにはあまりに遠く、惑星が違うんだし。うーん、スケールが違いすぎる。
ふと楓の脇にコンビニ袋を認めた。中身は弁当と飲み物みたいだ。
オレのために買ってくれたんだ。何だか胸がジーンとしてきた。
ありがとう、楓!
うん、コイツとはいい共同生活ができそうだ。
もちろん故郷を知らないから慰めもロクにできないけど、ひとつだけ言える。
「帰るぞ。ひとりじゃないんだから」
無器用なオレ。うまく伝わったかはわからない。
でも会ったばかりのオレたちだけど、肉親のように古くからの友人のように信用してほしい。
ここを第2の故郷として寂しがらないでほしい。そうなってくれればと望んだ。
楓は「ありがとう」と口にしてコンビニ袋を手に取り腰をあげた。黙ってオレの背中を追う。
しかしその袋の中身、しっかり千円以内だったのは言うまでもない。
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