愛しのココア

62/62
920人が本棚に入れています
本棚に追加
/638ページ
「そうです、雪なんです」 「え?」 「それはアラザンって云うんですけど、此処(ここ)で見る雪があまりに綺麗だから、その雪のつもりで、散りばめたんです」  ハルさんが微笑む。 「秋鹿の思いつきは大成功でしたね」  秋鹿は(はず)かしそうに謙遜する。「たいした思いつきじゃないから」 「いいえ、小さな工夫が、大きな(ゆた)かさを生むんですよ」  真鶴は銀の実で(きら)めくココアを見つめた。秋鹿の(ひとみ)に映る雪は、こんなにも美しいのか。 「ああ、また降ってきたわね」  麗ら彦が窓に顔を向けて呟く。皆も雪の散らつきだした空を眺めた。  真鶴は二杯目のココアをゆっくりと味わった。何てあたたかな飲み物だろうか。 -------------------------------------------- *『愛しのココア』おしまい。次のお話に続きます*
/638ページ

最初のコメントを投稿しよう!