宝石ショコラ

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 現在、の世界は、とても不安定な状態にある。それは新しい安定の前の、必要な不安定だった。を変えると云うことは、これまで固く張ってきた根っこを揺るがすと云うことなのだ。小競り合いも起きる。多少の衝突は避けられない。だがそれを無理に押さえつけるのはいけない。遺恨を残したままでは、新しい根は健康に育たない。だからお前が間を取り持って、双方が納得するようにしてほしい。  とても難儀な務めだが辛抱してくれと、頭領に頭を下げられ頼まれては仕方無い。だがとても松虫一人でこなせる仕事ではなかった。忙殺、と云う単語が頭に泛かぶ。まさに忙しさに殺されそうだった。  松虫以外にこうした役目につけるのは、玄帝(げんてい)配下では古暦(ふるごよみ)くらいだろう。しかしあの科学者きどりの墨の精は、面倒ごとを(いや)がって雲隠れしてしまった……相変わらず自分勝手な奴だ。けれどももしかしたら、同じように姿を消した凍土(いてつち)と関わりがあるのかも()れない。神楽坊は全てのと、の国を消滅させようとした凍土を、不問に附すことと決めたが、その意向についても不満を抱くものは大勢いる。松虫はその者たちの云い分にも耳を傾けなければならない。
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