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聖なる鯛焼き
《 1 》
「秋鹿、聞いているのか?」
銀河の問いかけに、秋鹿は我に返った。
「あ……ごめん、銀河。ちゃんと聞いてなかった」
正直に謝る。学校から帰る途中だった。今日も銀河は秋鹿の肩に乗って、ついてきていた。彼が頸元を温めてくれるおかげで、マフラーは必要なかった。
「どうしたんだ、秋鹿。疲れたのか。それともどこか痛いのか、」
「ううん、大丈夫。ごめんね、ちょっと考えごとしてた」
「考えごと?」
銀河は頸を捻る。
「うん。もうすぐ、クリスマスだなあって思って」
此処へ来て、初めてのクリスマスだった。期末テストがあったり、新しいケーキの作り方を覚えたりと何かと忙しかった所為か、このイベントの存在をほとんど忘れていた。
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