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「……行っちゃった」
急に頸元につめたい外気が触れて、秋鹿は顫えた。帰ったらハルとパーティーの相談をしようと考えながら、歩を速めた。
店の前までたどり着くと、中から人が出てきた。二人連れの女性が秋鹿の横を通っていく。片方は何回か見たことのあるお客さんだった。
「どうもありがとうございました」
秋鹿が頭を下げると、二人も会釈をした。寒い為かすたすたと歩いていく二人の後ろを、一人の男性がゆっくりとついていく。二人の連れだろうか。
その男性にも礼をすると、
「お食べ」
何やら紙包みが差し出された。
「あ、ありがとうございます」
貰っても良いのだろうかと途惑いつつ、断るのも失礼な気がして、秋鹿は受け取った。
男性はにっこりとして、女性たちの後を追っていった。穏やかと云う印象だけが残って、顔の特徴はまるで薄い人だった。
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