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捨扇は、その子どものような人間たちを、増やしたくなかった。冷たい川の底でふるえながら、人間たちが歓喜の声を上げて飛び込んでくるのを見るのが、好きだった。でも、もう二度とあんな哀しいことが起こらないように。自分はあなたたちに、臆病心を与えるようになったのだ。だってもし失敗してしまったら、もう決して、愉しんで、笑って、遊ぶことが、出来なくなってしまうから。
怯えて、ためらって、高い崖から引き返せば、あなたたちを守れるから。
だけどそれもあまりに度が過ぎれば、飛び込みの面白さも、誇らしさも、永遠に識らないままだ。
「秋鹿、屋台を見にいかないか」
柊が誘う。
「俺、腹減った。何か食いたい。さっきから、あちこちで良いにおいがする」
と、銀河もねだる。
「行ってらっしゃいな、秋鹿。私はまだ他のお手伝いがありますから」
「うん。有難う、おばあちゃん」
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