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伝える理由
私は、伝えたいことを思った時に
伝える癖がある。
だから、連絡ノートでも事細かに書いて、
伝えようとしてしまう。
そのせいで、私の書く連絡ノートはいつも
長文になってしまう。
廣崎にしてみたら、とてもめんどくさい
保護者なんだろうなぁ。
しかし、廣崎はどれだけ忙しくても、きちんと
返事を書いて、その日のうちにノートを
返してくれる。
思ったことをストレートに伝えるのだが、
その時の言葉は、かなり慎重に選んでいる。
思ったままに言いたい放題伝えてしまったら、
相手を傷つけてしまうことがある。
私は、言葉が時として相手を傷つける武器に
なってしまうことを知っているから。
私が、思ったことや伝えたいことを、
その場でストレートに伝えてしまうのには
理由がある。
幼い頃の私は、今の私とは真逆で、
ハッキリものを言うタイプではなかった。
どちらかと言うと、人の顔色を窺ったり、
人に合わせて当たり障りなく、周りから
浮かないようにしていた。
誰からも嫌われず、好かれようとしていた。
学生の頃、仲が良かった友達とちょっとした
すれ違いで喧嘩をしてしまい、私はその日、
その場で謝れなかった。
『明日の朝イチで謝ればいいや。』
そう思っていた。
でも、私は、彼女には謝ることが出来なかった。
大切な彼女は、喧嘩をした日の下校中に、
信号無視をしたトラックに跳ねられて
亡くなってしまっていたのだ。
私は、涙が枯れるほど、泣いて泣いて、後悔した。
そして、私は自分自身を責め続けた。
『何であの時に伝えなかったんだろう。』って。
ずっとずっと伝えたかった。
たった一言の『ごめんね』が伝えられなかった。
あの時にちゃんと仲直りをしていたら、
彼女が1人で下校することもなかったのに。
交通事故に合うこともなかったかもしれないのに。
もう二度と話すことも伝えることも出来ない。
今でも、その事がずっと心残りで…。
彼女を思い出すと涙が出てしまう。
それから、私は自分の在り方を変えた。
『後で伝えればいいや。』とか、
『今じゃなくても…。』とか、
伝えることを後回しにするのをやめた。
どんなに辛くても、きちんとその時その場で
相手に気持ちを伝える大切さを、今は亡き
大事な友達から教えてもらったから。
そうすることが彼女への償いだから。
人の顔色を窺って人に合わせることをやめた。
思ったことはきちんと伝えることにした。
自分の在り方を変えたことで、
私から去っていった人もたくさんいる。
私のそばに変わらずいてくれる人もたくさんいる。
今の私を好きだと言って、新たに
仲良くなってくれる人もたくさんできた。
私は、今は亡き友達のために、自分をかえた。
──超ポジティブで裏表なく明るくて
物事をハッキリと言える人───
それが、今の私。
それが、理由。
大樹にも、『後で……』は絶対にダメだと
教えている。
たとえ、友達と喧嘩しても、
『必ずその日のうちにちゃんと話し合い、
仲直りをして来なさい』と伝えている。
気持ちを伝えることは、大切なことだから。
言葉にしなきゃ、伝わらないから。
実際、大樹がどこまで理解してくれているかは
わからないが、それが大切な事だということは
気づいているようだ。
この話は暗くなっちゃうから、
ここまでにしよう。
とにかく、
私が、思ったことや伝えたいことを、
その場でストレートに伝えてしまうのには
理由があるのだ。
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