成長

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成長

毎朝、ジョージの世話をするのが 大樹の日課になった。 「ジョージ、今日も元気?」 いつも話しかけている。 “ふふふ。可愛いじゃん!大樹、ちゃんと お世話してるし。いいことやん。” お世話ができるようになったのは、 明らかに大樹は成長している証拠。 しかし、そこ以外の成長は見られない気が するが…。 相変わらず、支度するのは遅い。 「大樹、いつまでもジョージ見てないで早く 自分の事やんなさいよー!」 「わかってるしぃー!いちいち言われんでも わかってるしぃ!」 毎朝、こんなやり取り。 “わかってんなら、言われる前にやれよー!” そんな気持ちをグッとこらえ、出来るだけ、 気にしないよう努めた。 ちょっとだけ、反抗期なのか、最近は生意気な 話し方をするようになってきた。 “このまま、生意気になっていくんかなぁ…。 最近、口悪くなってきたしなぁ。 アァ言えばコウ言う…。はぁぁ。どうしよ…。” 考えないようにしていても、気になってしまい、 キッチンで朝食の片付けをしながらついつい、 大きなため息を付いてしまった。 そんな私を気にも止めず、大樹はゴソゴソと 準備をして、カウンター越しに大きな声で 「お母さん!行ってきまぁーす!」 そう言って、元気に玄関へ向かった。 「忘れ物ないね?気を付けてね!」 そう言って、玄関まで見送りに行くと、 大樹はジョージを覗き込み、そのあと、 こっちを見て笑顔で口を尖らせながら答えた。 「もう!お母さんは心配性だなぁ! 大丈夫だよ!鉛筆も削ったしー。 忘れ物なんてしないよー!あはは! 行ってきまーす!」 「はいはい。行ってらっしゃい!」 大樹の笑顔に少しホッとしながら、 玄関の鍵を閉めた。 “反抗的な態度をするのは、成長の証よね…? 大丈夫だよね…。” 無邪気な笑顔にホッとしながら、ちょっとだけ、 不安な気持ちも少しずつ積もってくのを 隠せなかった。
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