束の間の微睡みの中で

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部屋に入ってほっと一息 ずっとわいわいしている人たちに囲まれて疲れてしまった 唯一、楽しかったのは私を見てくれる彼がいたこと。一人だったなら寂しくて今頃どうなってしまったことか。私は幸せ者ね 笑顔を浮かべる、その姿が思い出される度一人ではないと思える アンナ「良かったです。ニックに会えたことが また、沢山お話をしたいものですね 明日のために作りましょう」 きっと喜んでくれるだろうと心が弾むように 鼓動している 早速、作らないと 人形作りに必要な布を探すのと目に必要なボタン、書くためのもの、縫い合わせるための針と糸を探していたら時刻は真夜中になっていて、すっかり日は落ちてしまっていた これが終わったら明け方になってしまうかもしれない でも、彼が喜ぶ顔が見られるならと考えていたら疲れも飛んでしまった 白い糸をつけて兎の形通りに線を引いた布を チクチクと縫い合わせてみては足りない空洞に 綿を敷き詰め蓋をするように縫っていく それを繰り返せば形はどんどん兎?のように変わっていった 彼への想いがどんどんと胸に溢れていく気がする その想いを込めて目を荒くしないように細かく縫い合わせるとそこには手にすっぽりと収まるくらい小さな兎があってほっとする アンナ「かわいい。これならきっと届くかしら ふふっ、明日が楽しみね」 きっといい日になるだろう ??「お楽しみのところ申し訳ございません アンナ様。ご説明と選択をお聞きしに参りました」 どこからともなく聞こえた声にびくっとして身をすくめる 私だけの部屋のはず、鍵はここにあるのに ??「アンナ様?大丈夫でしょうか? 私は貴女様に危害を加えるつもりはございません あくまで説明をしに参りました」 アンナ「…誰です?私が聞いたことのない声 一体、貴方は…」 振り返る勇気はなかった 明らかに何かおかしい気がして GM「私はGMと申します。貴女様のこの人狼ゲームにおける役職は純愛者でございます 今宵、愛する方を選んでいただきます」 アンナ「GM、人狼ゲームとはなに? それに愛する人を選ぶだなんて…」 何が起こっているのだろう。全く理解ができない GM「では、お答えいたしましょう、この人狼ゲームについて ここには人に擬態した狼、人狼が二人います 市民陣営は人狼を全て殺せば勝ちとなり 人狼陣営は市民と人狼の数が同数となった場合 勝ちとなります そして恋人、恋人に定められた者がゲーム終了時に生存していればどのような場合でも恋人陣営の勝利となります 最後にアンナ様の陣営、その他陣営の勝利条件となりますが貴女様のみの条件をお伝え致します 純愛者は愛した者の陣営が勝利したとき勝利となります 愛する者が処刑以外のサイコキラーによる襲撃 藁人形による道連れに選ばれる時貴女は愛する者の身代わりとなり死亡します」 思わず息を飲んだ。私は愛する者の代わりに死ぬということに 死という言葉が頭に色濃く残る アンナ「……愛する人が死ぬとき私が身代わりで死ぬ。例外もなく そう…そうなんだ」 頭の中で言われたことを整理する そして聞きたかったことをゆっくりと問いかけた アンナ「ねぇ、私は愛する人を指名していいのよね?私が自分の命を預ける人を」 自分が命を懸けるあの人は自分の本当に愛した人がいい それだけが心配だった GM「勿論、貴女様の選択によって決まります ご安心ください 貴女様の勝利は愛する者の陣営によって決まります。だからこそ常に考えていなければならない ご承知のほどよろしくお願い致します 貴女様は誰を愛する人に選びますか?」 アンナ「私はニックを選ぶわ 私の大切な人だから」 GM「貴女様の選択を承知いたしました では、残りの時間をごゆるりとお過ごしください」 優雅に私の前で一礼するとGMと呼ばれた男は 闇の中に消えていった 得たいの知れない人 でも、私の運命はもう定められた 私の最後の想い 気持ちをどうか受け取って アンナ「ニック、私は貴方を愛しています 例えこの身が先に朽ちようと」 人形に優しくキスを落とす どうかこの想いが届きますように 私の初めて見つけた暖かな光 明日も早い、ニックは聡い人 だから何も気づいてもらえなくていい それでも幸せでいてくれるなら 大事に机の上にぬいぐるみを置き自分はベットに入る 一人の私を温めてくれたのも救ってくれたのも彼だったから 寄り添ってくれたから私は凍えずにすんだの その分、今度は私が返す番 どうか、最後に残る気持ちが幸せなものでありますように そのまま深い眠りに落ちていく 暗闇は何故か暖かくまるで太陽みたいだった ◆ ◆ ◆ ◆
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