失意の果てに

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死を見送りすぎて感情が麻痺してしまったかのように感じた 前よりも何かを失った気がする ロディ『ニック、何をぼんやりしてるんだい 時間だ…行くよ』 声そのものは聞こえていた それでも立ち止まらずにはいられなかった アンナもクリスもマイクもソフィアもいなくなってしまった 彼らは少なくとも他人以上の関係だったのに 心が痛くなる一方でその痛みはなるくなってくれない どうせなら何もない方が幸せだった ロディ『だから、いつまで待たせるつもりだ ニック 人に関わるのはやめろと僕は言ったはずだよ』 ぴりっとした殺気が見えた気がした 流石にこれ以上は待たせることはできないと察した ニック『ああ、悪かったねロディ 時間を無駄にさせた』 ロディ『別に気にしてない、ただあまりに君が酷い顔をしているから言わせてもらっただけだよ』 彼が言うに俺はとても酷い顔をしているらしい 自分でも思うがきっと全てを失った死人のような 顔でもしているのだろう 自覚はあった。府抜けてしまっていたらしい 人狼であれば狩でもして思い出すべきだ そう思って、提案をしようとした ニック『昨日も悪いことをした。任せきりすぎていたね。だから今日は俺が……』 「いかないで」 何かに引き留められた気がした 急に続きの言葉が出てこなくなる なんだったのだろう。空耳?幻聴? わからない。辺りを見渡しても声をだせるものは 俺たちの他には誰もいない その正体は不明のまま ロディ『どうしたニック?やっぱりぼんやりしているね。誰か襲いたい人でもできた?』 問いかけられたものの襲いたい者がいるわけでも 食べず嫌いなわけでもない 謎めいた感情が胸の中に生まれていた さっきの声の影響か?とも思った だけど、襲撃する気になれない ニック『すまない、疲れたみたいだ だから、申し訳ないけど襲撃は任せていいかい?』 提案したと言うのにこんなに情けない状態になっているとは… ロディ『ふぅん、そう。じゃあ僕は決めている 子がいるから行くよ ゆっくり休めるといいね、今度こそ』 ニック『ありがとう。今度こそ眠ってくるさ 気をつけて』 やっとのことで手を振って相方を送り出せば しんとした夜の気配がその場に溢れた これはいつもの夜と変わらないけれど嬉しさはなく物悲しさが胸にあった それはきっとあの声のせい あれは……あれは俺が求めたせいなのかもしれない。願望が生み出した幻 そう思わなければ割りきれない 割りきれないんだ ニック「痛い、何かを責めるかのように この痛みはいつになったら終わる? ……もしかしたら終わりはないのかもしれないね」 自問自答して苦笑すれば彼女から貰った人形の方 を優しく胸に抱き寄せてベッドへと向かう 元々、狼の能力として授かった人形を手放して 他の人形を側におくなんて考えもしなかった 一人にはずっと慣れてきた 最初から側には誰にも置かず、馴れ合いも避けてきた 狼としてだけ考えて生きてきたのに ここに来て、アンナと会っておかしくなった あの笑顔が、言葉が忘れられない 忘れられない いっそのこと知らなければ幸せだった 失って後悔して、嘆いて苦しんで そんなこと考えるくらいなら 今になって自分が思うよりも彼女を、アンナを 大切なものにしてしまったんだと気づいた ニック「どうしていなくなってしまったんだ アンナ ずっと、一緒にいると言ってくれたじゃないか」 温かな記憶が、失くなった思い出が夜の眠りへと誘っていく ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
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