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佑ちゃんは私の肩を抱いて、静かに話し始めた。彼の低音ボイスが、耳に心地よく響いた。
「沙都のお父さんやお母さんにとって、沙都はかけがえのない大切な娘なんだぞ?
そんな大切な娘さんをくださいって言ってるんだよ、俺は。
はい、どうぞ!なんて言わないよな?
ご両親は、俺の人間性を見極めようとしているのに決まってるだろ?
娘に嘘を吐かせるような男は信用されないよ。俺だって、本当はずっと一緒にいたいさ…だけどな、この先一生涯を共にするんだから、少しぐらい我慢出来るよ。
俺は沙都が大事だから、沙都に自分の両親に嘘を吐くような真似をさせたくないんだ。
俺たち二人は、誰の前でも堂々としていたいんだ。沙都、分かってくれるよな?」
佑ちゃんが、そんな風に思ってくれてたことは、確かに嬉しいことだった。
真剣に考えてくれている佑ちゃんは、私の何倍も大人だなと思った。
だけど…、
現実を見て欲しいです。
「でもね…、佑ちゃん、
今帰ったところで、嘘がバレてお父さんに怒られるよ!今更、嘘でした〜なんて帰れないから!
今日で最後の嘘にするから…。
だから、ねっ?お願い!佑ちゃん。」
佑ちゃんの戸惑いが感じ取れた。
後ひと押し!
私は両手を合わせて、上目遣いで佑ちゃんをウルウルと見つめた。
佑ちゃんは、まだ知らない。
私が、かなり諦めが悪い女だってことを……。
to be continued
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