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松浦は佐々木に起こされた。
[アユミが病気になった。移動するぞ]
[どこに?]
[どこかの民家だ。アユミに布を]
松浦は急いでアユミに布を巻き付ける。
アユミは死んでるのかと思うくらいグッタリしていた。だが身体が火照っている。熱がある。
[ユウキはソリの荷物どかせ。アユミを乗せる]
[全部?荷物は?]
[ポケットに入るだけ。それ以外は置いてく]
[しっかり固定しろ]
風が強い。
[行くぞ]
佐々木が引き、後ろから松浦とユウキがソリを押す。逆風と雪でなかなか前に進めない。
[もっと押してくれ]
[動かない]
ユウキが答える。
[アユミ以外の荷物を捨てろ]
松浦が紐をほどくもうまくいかない。佐々木がナイフで紐を切る。アユミの身体がズレ、結び直す。
途中、何度も突風が吹き立ち往生する。
汗が松浦の目にしたたる。ユウキが息を切らしながら言う。
[アユミさんが裸でお風呂入ってくれる約束したよ]
[本当か?]
[うん。それにオッパイも触らせてくれるって]
[本当か?]
[俺も聞いた。だから頑張れ。絶対に死なすな]
佐々木が叫ぶ。松浦はアユミのオッパイを思い出す。お風呂のアユミを思い出す。勃起してくのが分かる。
[頑張るぞ、ユウキ]
松浦はユウキに声をかける。風の音でユウキの返事は聞こえなかった。
とにかく押す事しか考えられなくなる。雪から足を出すのすら大変だった。
[少し休憩だ。動けない]
佐々木が息切れしながら言った。佐々木は新雪の中を掻き分けるように進んでいた。
松浦は行く方向を見つめる。地形を記憶から掘り起こす。ひょっとしたら緊急用の公衆電話の近くから降りられるかも。そこから民家の屋根が見えたはず。
あそこは高さが低いはず。雪で積もっているからなおさら。
[もう少し行くと公衆電話がある。そこから降りれるかも]
松浦は佐々木に言う。
[今度は俺が引く]
松浦は佐々木の返事を待たずに引くツナを肩に回した。
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