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全員着替え終わり、三人座り込む。 冷蔵庫から温度計を持ってきていた。針は十度を指している。それでもかなり暑く感じる。 [薬は無さそうだ] 佐々木は言ったが誰も答える気力がない。 松浦は全ての力を使い切った。手足がダルく重い。 [あとはアユミ次第だな] 松浦はアユミを見る。真っ白い顔に汗が滲み出ている。汗が滴り落ち落ちてなければ死人の顔だ。 [凍傷の心配はない。お前らはどうだ?] 松浦とユウキは手足をきちんと見る。 [大丈夫][大丈夫そう] 佐々木はユウキの手足を調べる。松浦が覗く。 [大丈夫だ。痒くなるかもしれんが大丈夫] 佐々木の手も真っ赤に腫れていた。これが青かったら凍傷だ。松浦は大きく息を吸い吐いた。 [食べ物ないか?] 松浦の声で佐々木とユウキ二人で家探し。何もないらしい。 [隣の家を見るか?] 松浦は首を振った。とてもじゃないが力が出ない。 [アユミの手足が冷たかったら温めるんだ。お前の手をお湯に浸して、その手でアユミを温めるんだ。濡れた手はダメだぞ] 佐々木がユウキに看病の仕方を教えてる。ユウキはお湯に両手を浸す。 [痒いだろうが我慢しろ。オッパイだぞ] 佐々木が言う。松浦も頑張ろうと思った。 松浦はヨロけながら台所に行く。床下収納に気付く。中に梅酒の瓶。とりあえず佐々木に渡す。 他に大根飴。味噌樽があったがダメ。多分食べられる缶詰。ツナ缶が多い。 缶切りとタオル。箸。 三人でツナ缶や大根飴を食べる。梅酒を飲む。ものすごく濃くものすごく甘い。アルコールは多分蒸発している。ユウキにも少し梅酒。 [父さん達は先に休んでて。僕が見てるから] ユウキが言った。 廊下で佐々木と並ぶように寝た。松浦は目を瞑ると自分の寝息を聞いた気がした。
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