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「真琴~?また、ぼーっとしてる」
「へ?」
「あほ面。ひょっとしてまたあの先輩のこと考えてたとか?」
そうやって茶色がかったクリクリの目で
私を覗き込んでくるのは
篠山 智子-シノヤマ トモコ-
音読みのチコから段々と変化を遂げ、
現在はチャコという形で一旦落ち着いている。
「ここの大学って聞いたはずなんだけど、
なかなか見つからないね」
「あんたってほんと馬鹿だよね。
不確かに先輩追っかけて同じ大学まで来ちゃうなんて、一歩間違えたら
ストーカーだよ?
もう既に後には引けないよ?」
「うるさいな」
わかってる。
友達の情報を鵜呑みにして、
ほんの少しの可能性に賭けここに来た。
先輩追いかけて同じ大学入って、
もう入学して半年が過ぎようとしているのにまだ本人がどこで何をしているかわからない。
それどころか
本当にここの大学にいるのかさえわからなくなっていた。
「そもそもあんた、高校の時も1年しか
かぶってないんでしょ?話したことあるの?」
「話したことくらい!あるよ?
.....1回だけ。」
「そんなの、
どうせたまたま廊下でぶつかって
[すいません]
[あ、こちらこそ]
くらいのレベルでしょ?
それってただの人間のマナーだからね?
話したって言わないからね?」
窓の外では秋が心地良い風に吹かれ
私を嘲笑うかの如くハラハラと落ちて行く。
「…風なんかに負けんな、しっかりしろ」
「あんたがしっかりしなさい
木に八つ当たりなんてしてんじゃないわよ」
無駄なのはわかってる
わかってるけどもう一度みたい
「セピア色だったの」
「はいはい。今ので459回目」
チャコにこの話をすると決まって呆れた顔をする
「ま、そのうち諦めるでしょ。
終わったらいつでも言って?
あんたのその顔なら...
んー、まぁ4年で10人ね」
チャコは口が悪いくせに、妙にモテる。
その謎は未だに解明されてないのだけれど
鍵となるのはやっぱり容姿とかだったりする。
肩で揃えられたまっすぐな髪の毛は
目の色と同じアッシュブラウン。
すっと通った綺麗な鼻に
いつもぷるぷるの唇。
笑った時に見える八重歯が
男の子の心をグッと掴んで離さない。
身長は同じくらいだけど、
ここはお互い伸び代を期待したい高さ
とでも言っておこう。
性格は、
まあ あんなかんじ。
口は悪いけど、
普通にいいやつ。
口は悪いけど。
ほーら、また来た。
前方に曲者(くせもの)男子が2人。
「ちょっといいかな?
1年の子だよね?俺らと少し話さない?」
やっぱり。
「もちろんです! ね?真琴」
無視。
チャコは妙にモテる
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