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そこからは、本当の家族としての暖かい家庭を笑顔で味わう年月を重ねたのである。
ところで、あの日、子供を助けた事で血液の驚異的な能力は失ったものの、彼女にはもう一つ、彼女だけにしか得ない、ある特別な能力が存在していた。
それを雅俊が確信するのに、それほど年数はかからなかったようだ。
彼女には、危機的状況を回避する為の特殊能力‥‥。
未来が見通せる予知能力が備わっていたのだ。
直感にも近い状況下で、度々訪れる予知の映像が彼女の視界を占拠する時、物事は大きく動きだす。
病院自体も、それで幾度となく危機を脱し、ここまで大きな病院となって行ったのだ。
ただし、彼女が望めば全て得られる訳ではない。
雅俊本人が病魔に侵され、すでに手遅れの状況であった、この時だけは、回避されなかった現実に大いに悔やんだものだ。
当然の成り行きとして、父親としては、病院の跡継ぎとして託したかった息子有都だが、それだけは頑なに拒んだ彼女の意向をすんなりと受け入れると、やがてこの世を去った雅俊。
今度は、あの世で先に待っている妻の為に生きるよ‥‥そう言い残したまま‥‥。
結果として病院は継がせなかったものの、息子の有都が本人の意志で医者としての新たなる道を歩み始めると、イゾルテは突然、世間から姿を消した。
水面下で、彼女はある行動を取り始めていたからだ。
「それが、あの石吹瞬を国内に搬送する事だったんだな‥‥。」
晃の言葉に、忍も言葉なく頷いている。
「何の為に、石吹瞬を自らの力で復活させたのか‥‥。しかも、この頃にはすでに、元の美貌溢れる女神の姿へと戻っているようだね。」
「それも、おかしな話だな。意図的に、細胞の老化を遅らせていたとは思えない。何か大きなキッカケがあったはず。」
「それなら、このデータベースの持ち主‥‥この女性が、大きなキッカケになったんだと思うよ。」
「どういう事だ?」
「この女性も、イゾルテと同じ遺伝子構造を持っている。つまり‥‥イゾルテの実の妹が、このデータベースの持ち主だという事さ。」
忍の言葉通り、無数に散らばっていたDNA遺伝子や染色体のデータに、特定マークを付けた上で密かに解析ソフトにかけていた上での言葉だった。
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