第17話

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イゾルテの妹が生きている‥‥しかも、姉と同じように、あの爆発事故に巻き込まれ蘇えった彼女にもまた、ある特殊能力が備わっていた。 それは、電磁派を意図も容易く操る能力‥‥。 「どうして、彼女達にそういった特殊能力が備わったのかも、ここでは語られているみたいだ。二人の両親は、同じくこの事故に巻き込まれ亡くなっている。姉のイゾルテは死に瀕した瞬間“事故が起こるのを知る事が出来ていたら、こんな参事に巻き込まれる事にもならず全ての命を救えたのに”‥‥と切実に思った。だから、再び死の淵から蘇えった時には、危機的予知能力を得たのだと‥‥。一方、妹の方は“事故直後に閉じられた巨大なドアさえ開ける事が出来ていたら、中にいた研究者だった父親を助ける事が出来たのに”‥‥と彼女も瀕死の床で思ったようだと‥‥。」 死という一線を越えた先で、姉妹が個々に手に入れた特殊能力。 人の最後の思いが、なぜに不思議な力を生み出したのかは到底想像だに出来ないが、この姉妹が手に入れた能力は、果たして本当に現世に命をとどまらせる程、必要性を持ったものだったのだろうか。 普通の人間には手に入らないものであるが故に、欲にまみれた悪意が少しでもその存在を取り込もうと意識した途端、最悪の状況へと追い込まれる。 現に、姉イゾルテの辿った運命自体がそれを物語っているかのようだ。 同時に、人知れず身に宿している特殊能力に、これまで幾度となく振り回されて来た晃自身にも、それは痛い程に伝わっていた。 だとしたら、影の主犯である人物も、彼女達と同じく死の床で何かを切実に思って得た特殊能力に違いない。 それが、結果として自らの姿や気配、存在さえも消し去ってしまう能力を生んだのだとしたら‥‥。 「自ら死に飲み込まれたのかもしれない。」 思わず晃が言葉を口にする。 恐らく、望んだ本人は、自らをも消し去ってしまいたかったのだ。 生きる事にすでに絶望していたのか、それとも、現実の残酷さを呪ったのか。 たった一つの大きな事故に巻き込まれた子供たち‥‥。 生死を分けた先に、最も過酷な運命を生きる事になってしまった彼らの時間(とき)は、まだ終わってはいないのだ。 それを印象づけるかのように、予知能力を携えていたイゾルデは既に時の波間へと数多くの波紋を投げつけていた。 そう、自らの命の終わりを彼らの終止符とする為に‥‥。
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