第17話

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「一体、どうしたらいいの?」 再び僚の見えざる者への視線が、祥己の背後へと注がれる。 「仕方がない。あんたに、この魂の姿を貸そう。それで助けられるならば‥‥。祥己さん、兄さんのこの身体、しっかり受け止めてくれよ。」 「えっ?」 言葉の意図が掴めないままに、突然にして意識を失うように背後へと倒れ込んだ真澄の身体。 とっさに膝間づきながら受け止めると、白い淡い煙のようなものが二つ、閉じられた扉をすり抜け内側へと飛び込んで行く。 恐らく、田中僚の魂と花木田南緒人‥‥。 2人の存在自体が、瑠依の救出へと向かったに違いない。 『瑠依さん‥‥お願い、無事でいて‥‥。』 ここから先、踏み出す事の出来ない一線を前に、祥己はただ祈る事しか出来なかった。 半年近くを自宅療養と自宅待機のままに過ごした忠雄。 一カ月後には、犀と共に、すでに新たな学校への手続きが決まっている。 そんな環境の中で、この忠雄にも、色々と見えて来たものがあった。 真侠会という組織が一体どういう所なのか‥‥‥。 ここへ連れられて来た時には、父親と同じ匂いのする連中が何人も出入りしていただけに、警察関係者にも目を付けられている暴力団的な位置付けにいる組織なのだろうと受け止めていた。 だが実際、様々な企業を経営する事業家という側面の方が表立った顔のようだ。 特に組長‥‥‥敷地内に住んでいる連中は、そう呼んでいるのだが‥‥政治家や政財界の大物との繋がりも多く、一見、会社経営の社長と言った風貌の方が強い。 本来ならば、本妻との間に息子がもう一人いる身ながら、この離れに住んでいる犀は、組長の愛人の息子とも言われていた。 犀を自らの手元に引き取ると組長自らが決めた時点で、身内内でかなりモメたようで、結局、戸籍上の妻である女性は息子を連れ、家を出ると実家へと移り住んだようだ。 なにせ、彼女の実家は元々名の知れた暴力団組長の一人娘であり、衰える事の無い勢力図では上位にいる立場の人間に入る。 離婚とまではゆかなかったようだが、誰の子かも分からない子供を自らのテリトリーへと連れ込まれては、納得出来なくて当然なのかもしれない。 まして犀本人は、生まれつき高いIQ知能を持っていたが故に、すでに3歳から専門家により英才教育を受けていたと忠雄が知ったのは、つい最近の事だ。
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