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「あなたから初めて聞く名前ですね」
カタリと席を立つ錬治。
俺はヒクリと顔を引き攣らせる。
テーブルを回りこんだ錬治は俺の横に来ると躊躇なく…抱き着いた。
間違いない。
気のせいなんかじゃなくコイツ…俺の知ってる“奴”だ!!
「ちょwww放せwww何なんだよwww」
「紅…紅…」
「腹に頭ぐりぐりするなしwww」
椅子に座ってる俺に合わせるためか床に膝をついてまでして、腹に顔を埋めるそいつの黒髪を引っ張る。
「?二人はお知り合いなのですか?」
「これは――「知ってる…俺、紅好き」
「?紅…というのは」
「はっはっは。それは俺の愛称なんだぁ。赤色が好きだったせいでねぇ~あははは」
「二人が知り合いとは…驚きました」
「いや~俺も昔の話だからね!忘れてたの!ww」
なんとか抱き着いてるやつを離そうとするも離れない。
くそっ馬鹿力め!!wwwwww
というかこいつは絶対保護しなくても大丈夫な奴だから!!wwwwwww
俺何かあっても放置する…というか俺の手助けさせる!!wwwwwwwwwwww
結局離れてくれなさそうなので、俺の隣に座らせて料理を注文した。
考えた末、今日はイタリアンで、まとめてみた。
ドリアやピザ、カルボナーラetc.
ゆっくり食事ができるって素晴らしい。
「錬治。いい加減何か食べなさい。体に良くありませんよ」
「…や」
「なに?こいつメシ食わねーの?」
持参した野菜ジュースを飲みながら清雅に聞く。
「ええ。いつも食べなさいと言っているのですが…あまり食べず…最終的には甘味料のみでカロリー摂取を終わらせようと……」
こいつ、そんなに偏食だったのか?
いつか見たときは普通に食ってたように見える。
同職だからか稀に顔は合わせてた。
その時はなんでもない顔して二人前くらい食べてた気がするんだが。
と言っても、最後に顔を合わせてたのは…3年と7カ月くらいか?
たしか南欧の方だったはず。
「おい、メシはちゃんと食え。いつ何が起こるか分かんないご時世だぞ。体に活動エネルギー入れておけ」
取り敢えず言ってみる。
この学校の生徒は狙われてる。
いざとなったらコイツにも動いてもらわないといけないんだ。
体調管理を万全にしてもらわないと。
「……ダメ?」
「駄目だ。俺は犬は好きだが、いう事のきけない“駄犬”は嫌いだ」
「………………」
コイツは俺に駄犬と呼ばれるのが悲しいらしい。
短い付き合いだがそれは知ってる。
なぜか知らんが懐かれてるし。
しょんぼりと少し顔を伏せた〈錬治〉は、緩慢な動作で料理を注文した。
錬治というのが本名かは知らない。
俺はずっと犬と呼んでいたから。
最初にあったのは何年前だったか。
たしか東南アジア辺りだったな。
え~と…あの辺で仕事したのは……6年前?
俺が13の時か……ならコイツ11?
よく考えれば二人して若すぎて浮いてたのが切っ掛けだったか。
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