61人が本棚に入れています
本棚に追加
「凄いですね雪澄。あの錬治に自ら料理を注文させるなんて」
トリップしかけていた意識が清雅の言葉で現実に戻る。
「あぁ…いや。まぁ…な」
コイツは確かに基本、人になつかない。
俺と同職の人間はそんなもんだ。
弱肉強食、自分より強いものに敬意を払う。
でも根本は、依頼主の言葉一つ。
生きるも死ぬも、実力だけがものを言う。
そんな人間が、進んで人間関係を作ることは少ない。
でも、清雅には十分になついてる。
後が辛くなるかもしんないのに。
「清雅はもっと強く言ったらいいよ。そのうち聞き入れるようになるさ」
ちらりと錬治を見れば、こちらを見ていた。
まるで親しい人間を作ったことを反省しているような表情で。
「そんな顔すんな。そこはお前の勝手だ。俺が口出しする義理はない」
俺は料理を口に運ぶ。
今日もここの料理は美味い。
料理を食べながら俺は片手で隣にある少し高い頭をぐしゃぐしゃに撫でまわした。
最初のコメントを投稿しよう!