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オールナイトは楽しかった。丁度年が変わる時間にはBGMが新春ソングに変わり、新年になったんだなあと感動した。
しかし今珠美は車の中に居た。空は白白と明るくなって来ているが、珠美の目の前は真っ暗だった。
軍資金が底を突いたのだ。
ガソリンは満タンだが、この疲労と眠さに耐えて車を走らせるなんて出来そうにない。かといってホテルも取ってない。お腹も空いているが食べ物を買うお金も無い。
新年そうそう絶望の谷に突き落とされた珠美の目の前に眩しく光る初日の出が現れた。
その何と神々しい事か!
珠美は初日の出に感動して泣いた。決して悔しくて泣いているのでは無い、と思う。
初日の出の光を浴びていると浄化されていくのが分かった。清々しく厳粛な気持ちが広がって来た。
もう、本当にやめよう。下らなすぎる。お正月にこんな有り様じゃみっともなさすぎる。
来年は伊勢神宮にお詣りに行こう! それが本来お正月に三重県にいる意味じゃないか。
ちゃんとホテルも予約して、身を清めて初詣に行こう!
珠美は初日の出に誓うのだった。
〈終〉
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