君と僕が創り出す物語

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君と僕が創り出す物語

死にたい ぼーっと天井を見つめながら ぼんやりとそんなことを思う どうせ死ぬ勇気なんかないのに 僕らは弱虫な生き物だ 例えとしてここで僕が今の気持ち、 つまり死にたいと言う一言を SNSにアップしてみるとしよう これを見たある男のユーザーは 死ねばいいと書き込んだ またある性別不明のユーザーは wwと言葉すら書かずに僕を嘲笑った 正義感の強い女のユーザーは 死んだら駄目だと必死に説得してきた これの何が弱虫かって? 誰も彼も画面の中でしか 僕のことを見れないんだ ひとりめの男のユーザーにとって 僕は面白半分のゲームの材料だ どうせこんなことを書いたって そいつが決めることだから 自分には関係ないと いったところだろう ふたりめの性別不明のユーザーにとって 僕は笑いの種だ 何を馬鹿なことを言っているんだと 死ねるもんなら死んでみろと いったところだろう さんにんめの女のユーザーにとって 僕はいい餌なのだ この人を救ったら自分は人を ひとり助けたことになる そんな自分の正義感の強さに改めて 惚れ直すための道具と いったところだろう そしてこの書き込みを見た数に 対してコメントがあまりにも 少ないということはきっと 世の中の半分以上は このやり取りを遠くから 笑ってみている冷め切った 傍観者ということだ ひねくれた性格なのかと言われれば それまでだが用心深い性格だと 言われた方が気分は良い 常に人を疑っているわけではない だが疑う要素しかないと 言うのが実のところ本音だ なぜあんなにもペラペラと 嘘が出てくるのか なぜあんなにも簡単に人を 裏切るのか 人と関わらない僕にとって 人と人が裏切りあいどす黒い血を 流し戦う様子は あまりにも滑稽だ まぁこれも一種のゲームなんだろう SNSだってそうだ 反応が来るだけで 分かり合えた気がして嬉しくなる 誰かと繋がっている気がして安心する 「下らないな」 そう呟きもう一度自分の書き込みを見てから 設定画面を押してアカウント削除 ボタンに親指で軽く触れると 僕は部屋を後にした
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