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八木夕子が転校してきてから2週間が経った。
隣の席のクラスメイトとして世話を焼かなければならない場面も多々あり、人となりを知る機会も同じように多くあったわけだが──、正直に言って、あいつは私の嫌いなタイプをそっくりそのまま体現したような人物だった。
「まだ友だちいなくて」とちゃっかりカーストトップのグループに紛れ込んでいるくせに、あたかも計算なんてしていません、とでも言いたげな顔をするところ。
都合上よく知らない人と話さなければならないときには相手を値踏みし、その結果によってあしらい方がてんで異なること。
家が医者らしく、話の節々にそれを挟んでくるところ。
何より、自分と同じ顔の人間が自分の嫌いな人間のお手本ということに腹が立って仕方がない。
あいつが転校してきてからというもの、いろいろな人に「朝子ちゃんそっくりの転校生来たよね?」と聞かれることが続出しており、私はそれに辟易している。
これから先、私とあいつを混同して覚えてしまう人がいたら厄介だ。端から万人に好かれるなど不可能な話だと思っているので私は人からの評判に固執はしていないが、他愛のない理由で悪く見られるのは当然嬉しくない。
そんな折に、担任が私たち二人を放課後の相談室に呼び出した。
そこで私たちに告げられたのは、あまりにも荒唐無稽で、残酷な真実だった。
夕子は、私のクローンだそうだ。
頭が真っ白になった。私に、コピーが存在したなんて。
身内ですらない先生がこれを知っている理由やクローンがいる経緯やらなんやらを話された気もするが、あまりに呆然としてしまい、すべての言葉は私の頭上を通り抜けて行った。
嘘だ。
日常に変化を求めてはいた。けれど、こんなのじゃない。こんな馬鹿な話があってたまるか。
教室に戻って、五時間目を受けていた最中、私は気がついた。
隣の女は、私と遺伝子レベルで同じである。ならば、私があんな性格になってしまう可能性も存在したことに。
二重の衝撃に殴られ、吐きそうになった。実際、トイレに駆け込んで吐いた。
もういやだ。こんなのやめてくれ。
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