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朱虎
朱は美しい色だ。
美しくて残酷な色でもある。そして強い色。
誰にも消せない色。何にも染まらない色。
朱は燃え上がる炎の色。
朱は哀しい血の色。
そして…
朱は心に沸々とわきあがる恋の色。
夕焼けが儚く、一瞬の光を持っているように。
恋もまた、永久には続かない。
いつかは消えゆく、その短い、刹那の時間。
遠く先まで続いていくと、恋をしている間は信じてやまないのに。
朱に染まる炎もいつかは寿命がつき、周りのものを燃やし尽くして消えてしまう。
そう、私の心も、熱い想いも。
そんなことわかっているのに。
なぜあなたの笑顔がこんなにも輝いて見えるの?
いっそのことその恋の炎が私の身体まで焼き尽くして。
このまま神獣である白虎とやらが私を天へ連れていってくれればいいのに。
そうすれば、私の心は朱に染まったまま天へと昇れるでしょう?
もちろんそんなこと神が許すはずないとはわかっている。
私はいったいいつまでこんなことを考えるのか。
私の心はいつまで朱に染まっているのか。
そんなことは誰にもわかるはずがない。
だから今日も私は何も考えずに刃を奮う。
あなたにこの想いが届くまで。
――朱は血の色、そして恋の色。
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