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僕が流れ着いた場所はどうやら端の方にあったようだ。丁度行き止まりにいたようで、中心部に近づくにつれ、道が複雑に入り組み始めた。崩れて、壊れかけている部分が多いけれど、この謎の施設は明らかに文明を感じさせるものだ。道の途中には、くすんだ赤い絨毯のひかれた、酒場のような所もあった。人がいた名残……そんなものがありありと伺える。彼らは一体どこへ行ったのだろうか?
そう考えているうちに開けた場所に出て、僕は思わず息を飲んだ。半球型のホールはガラスで出来ていて、外の景色が鮮やかに見えた――――強い黒の中に沈んだ、人工物の群体。ひたり、と手にガラスの冷たい感触を感じた。
その街は光のない、海の底にあった。なけなしの電灯がぼんやりと、暗い深海を照らしていた。
「あぁ。そういえばこの街の名前を言っていなかったわ」
僕は声に導かれるように、後ろへと振り返った。
「光のない街……『ライツインザディープ』へようこそ」
闇に沈んだ街をバックに、魚人の少女がぎこちない笑みを浮かべた。
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