さくらさん

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コンコン 「紗優美?」 どうやら、泣き疲れて寝てしまったみたい。 賢吾の声で目覚めて時計を見ると、もう6時を回っていた。 「ん、今、行く」 なんだか、声が枯れてる。 布団の中で嗚咽を堪えてたからかな? 私は、布団から出て、階段を下り、台所へと向かった。 今日の夕飯は何にしよう。 私が台所に行くと、賢吾は驚いて寄ってきた。 「紗優美、どうした?  何があった?」 「え?」 何のこと? そう思ったのも一瞬で、泣いたまま眠ったせいで目が腫れているに違いないことに気付いた。 私は、そのまま洗面所に行き、鏡で確認する。 「あーあ」 私の目は見るも無残に腫れていた。 「紗優美、何があったんだよ」 心配した賢吾が、すごい勢いで詰め寄る。 「な、何でもないの。  さっき、感動的な動画を見ながら  寝ちゃって」 私はその場しのぎの嘘でごまかす。 だけど、それをそのまま信じることはできない賢吾は、疑いの眼差しで私を見る。 「そんなに腫れるほど泣ける動画って  何だよ?」  泣ける動画… 泣ける動画… 「ふ、フランダースの犬!」 「……… 」 一瞬の沈黙の後、 「ぷっ  あれは、泣けるよな。  俺、最終回しか見たことないのに  泣いたもん」 と賢吾は吹き出した。 「とりあえず、蒸しタオルだな。  今日は、俺が作るから、そこ座ってろ」 賢吾はそう言って、蒸しタオルを用意してくれた。 賢吾、ありがとう。
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