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さくらさん
休みが明け、私たち2人とも仕事が始まった。
去年までと何も変わることはなく、これまで通りの生活が始まる。
ところが、成人の日の昼過ぎ、2人でのんびりテレビを見ていると、賢吾の携帯が鳴った。
「ん? なんだろ?」
首を傾げて、賢吾が電話に出るから、私はテレビのボリュームを小さくした。
「もしもし? さくら?
ああ、あけましておめでとう。
ん、ああ、そのこと?」
賢吾は話しながら、席を立って階段を上がる。
聞かれて困る話?
名前…
呼び捨てにしてたよね?
谷口さん、下の名前、さくらさんって言うんだ。
会社の先輩って言ってたのに、下の名前を呼び捨てにするなんて…
縒りが戻ったってこと…だよね?
私は、テレビを消して、自分の部屋に戻った。
そして部屋で、そのまま布団に潜り、ひとりで声を殺して、ひっそりと泣いた。
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