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不意にこのカフェの扉が開いて、取り付けられている大きな鈴がカラカラと鳴った。 扉の方に目をやると、一人のシックなドレス姿の女性がカフェに入ってきたのが見えた。 しばらくすると、女性客は空いているロココ調のテーブルと椅子の席に腰掛け、カバンの中から分厚い書物を取り出した後、メガネをかけて、その書物を熱心に読み始めた。 「いらっしゃいませ」 すぐに女性客の席まで行き、注文を聞く。 女性客は20歳手前ぐらいの、可愛らしさと美しさが上品に融合した高貴な女性だった。 こちらが声を掛けると、チラっと目線を上に向けた後、すぐにまた本の方に目線を落として、 「珈琲をお願い致します」 とだけ低い声で告げた。 「かしこまりました」 こちらも、冷水の入ったグラスとおしぼりをテーブルに置いて、カウンターに戻り、注文を厨房にいるマスターに伝えた。 今日の客は今現在、3名ほど。 静かな店内には、クラシックの演奏が流れてはいるが、音量は極めて小さく、ほんの微かに音楽が流れているのが聞こえる程度にしてある。 しばらくは離れた場所から、正面に見える今注文を取った女性を見つめていた。 その後、マスターがグアテマラ産の香り高い豆から淹れたコーヒーを出してきたので、すぐにそれを女性客のテーブルまで運んだ。 「ごゆっくりお過ごしくださいませ」 「ありがとう」 形式的なやり取りをした後、またカウンターの方に戻った。 しばらくは、やることもないので、小さな音量のクラシックの演奏に耳を傾けた。
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