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それは巨大な城や宮殿の遥か上部に鎮座した。 否、鎮座したという言い方は、本来は冒涜的だが、しかしこの土地の価値観としては、それが全き正統な意味を帯びていた。 巨大な城や宮殿の遥か上部に鎮座するのは、天高く昇りつめた場所にある、一つの塔であった。 その塔は、西郷神社を忌み嫌うように、神社からは遠く離れた場所に位置したが、異様なまでの長々とした高さを誇りながらも、極めて細く、ただひたすら天空に向けて、細く細く一直線に伸びきっているだけの遥かなる塔であった。 その塔の最上部に、頑丈極まりない防弾ガラスで覆われた不気味な小部屋があった。 そこに住まう存在は、ただ一人だけ。 巨大なるロココ調の瀟洒な椅子が一脚だけ置かれた、塔の最上部の部屋には、巨大な椅子の大きさにはまるで不釣り合いな、全く小さき肉体しか持たない一人の"稚児"が鎮座ました。 この土地において、最も位の高い、純然たる王子であった。 その邪悪さは生まれついてのものであり、まさに邪悪として生まれ、邪悪として生きる、純粋培養の王子であった。 生まれながらにして、この塔の最上部の部屋に住まい、巨大すぎる高貴なる椅子に、稚児の小さき肉体を乗せて鎮座ましましている存在であった。 その目は全てを破壊する。 その口は全てを喰らい尽くす。 その指は全てを操る。 その声は全てを打ち破り、引き裂き、崩壊に導く。 その邪悪さは万物を超える。 そして、夜な夜なに見るその夢は、殺戮の光景のみを視覚化した。 それはそのまま、そっくり現実の光景に反映されていた。
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