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6
大山参道は、その日、赤一色に染まっていた。
全面が真っ赤な紅葉に染まり、その壮観な美しさは、参道を通る者達の心に、なんとも和やかな灯を灯す。
転校生・向井田涼がこの参道を通るのは、初めての経験であった。
「美しい」
そうポツリと呟きながら、向井田は心軽やかに、美しくも壮麗な赤に染まったこの参道を歩いた。
しばらく歩を進めた頃合いであった。
紅葉の向こう側から、只ならぬ気配が感じられる。
何かが蠢いた。
真っ赤な何かが…
向井田はそのまま歩き続けたが、美しく赤く染め上げられた参道は、そのうちに壮麗かつ優雅な赤から、冷厳かつ血腥い赤に変容した。
参道の脇の赤き紅葉の群れから、鋭利な刃物が向井田目掛けて飛び交った。
それを瞬時に避ける向井田。
すぐにその投げられた刃物を受け取り、今飛んできた方向に投げ返した。
「ぎゃっ!」
断末魔の叫びと共に、真っ赤な紅葉が生い茂る中に、さらなる真っ赤な鮮血が飛び散った。
赤と赤の冷酷な饗宴。
さらに振り下ろされた天空からの大鉈を避けた向井田は、大鉈を真剣白刃取りで抑え込むと、それをクルクルと回しながら天空に投げ上げ、紅葉と紅葉の狭間を飛び交う者の心臓を抉った。
「グワッ!」
断末魔は、また参道周辺の赤に響き渡り、紅葉舞い散る真っ赤な道程には、さらなる赤き鮮血が大量に放流された。
まさに優雅なる赤と、獣的な赤の、生々しき饗宴。
参道は、紅葉の赤と、獣の鮮血の赤に塗れて、その狂的な赤の様相をさらに異常に高めた。
正面から斬りかかってきた紅装束の一群を、真剣白刃取りで手に入れた大鉈で、向井田は一瞬にしてズタズタに斬り裂く。
紅装束の一群は、その首を切り裂かれ、真っ赤な紅葉に染まる参道に首を落下させると同時に、大量の鮮血を紅葉の赤の上に撒き散らした。
美しき紅葉の赤と、生首が舞う、夥しい鮮血の赤の饗宴。
それはまさに一瞬のことであった。
大山参道は、麗しい紅葉の赤と、生首が斬り裂かれた大量の鮮血の赤に染まりながら、尚も、不気味なまでの優雅さを誇っていた。
「美しい…」
血まみれの赤に染まりながら、参道を歩く向井田は、そう詠嘆の心持ちを漏らしながら、この紅葉と鮮血の赤に染め上げられた参道をやがて通り過ぎた。
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