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もう無理
そんなことをいろいろ考えていると、抱いていたパトロックがまた発言した。「お父さん、お父さん、あそこに見えないの? あの暗がりに 魔王の娘たちが?」こうなるともうファントリドスは彼の言うことすべてが恐ろしく感じてしまうようになってしまった。だが、ファントリドスはちゃんと見えていた。その蜃気・・・蜃気楼! そうだ! 蜃気楼だ!
いままで見えていたのは蜃気楼だった。ヒトラーの出していた超能力の蜃気楼だった。岸辺にさいている色とりどりの花も、ヒトラーの住んでる城でダンスしていたのも全部、蜃気楼だったのだ。ヒトラーはその蜃気楼で息子を狙っていのだ。しかしなぜ息子を狙っていたのだ? ファントリドスは考えた、自分が収容所から抜け出した時から今までの行いを振り返ったのだ。すると一つ思いついたのが、息子がこの蜃気楼を本当だと思い、こちらに飛び込んでくれば、父も安全を確認しにこちらに来るのではないかと。ファントリドスはもう引っかからないと思い、必死に銃で撃ち続けた。だが当たらない。しかも、今ここは一面野原なので息子に言ってきた言い訳はもう思いつかない。こうなったら息子の目が見えないのを利用して、まっぴらのウソをつくしかなかった。パトロックには申し訳ない思いをしながら「息子よ、息子よ、父さんにははっきり分かる 灰色をした柳の老木が そんなふうに見えるんだ。」 と言い訳を言った。
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