偽りの贖罪

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日本全国で起きる不可解な事件。 Kの仕業とまではつかんでいたが、それ以上の情報はない。 犯行は主に関西地区で行われることが多いが全国に被害が及んでいて掴みどころがなかった。 愛知県警察に対策本部が設置されているが戦功を上げたことはない。 犯行は物理的攻撃と司令塔のハッキングなどバラバラで管轄が違う部署で協力体制を取っているが縄張り意識の高い組織内でそれは機能していなかった。 そこで白羽の矢が立ったのは斎藤拓海と近藤誠の二人。 元愛知県警特殊部隊(SAT)で現サイバー攻撃特別捜査隊に所属している斎藤と、SATで斎藤の後輩にあたる近藤に極秘で捜査命令が下った。 今は内勤になった斎藤は少し伸ばした髪に、着痩せした筋肉質の体、近藤は軍人のような雰囲気の、お互い30代で現場主義の警察官だった。 その斎藤に何故そのような重い任務を担当することになったのか。 それは天才の犯罪者に唯一面会出来る人物が斎藤ただ一人だったから。 町田一樹、囚人番号が0なことから「レイ」と呼ばれる。彼は12人の人間を食い殺した幼い顔をした若い男。 精神鑑定の結果、犯行時錯乱状態ということで無罪を勝ち取り、精神病棟に収容されていたが、職員を次々殺していくので彼専用の隔離病棟を作って監禁されている。 そんな危険な犯罪者を何故生かしているのか。 彼は数々の難事件を解決出来る能力がある、その一点だった。 日本では非公式な、司法取引だった。
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